公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告霊枢勉強会報告 『黄帝内經靈樞』 口問(こうもん)第二十八・第九章NEW

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和六年(2024年)9月 8日(日) 第42回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者: 会場参加者 19名

○『黄帝内經靈樞』 口問(こうもん)第二十八・第九章

○01 黄帝曰。 02 人之哀而泣涕出者。 03 何氣使然。

01 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 02 人の哀しみて泣涕(きゅうてい)出(い)づる者は、 03 何(いず)れの氣(き)か然(しか)らしむ、 と。

(解説)
02節の 「悲しみて泣涕(きゅうてい)出づる」 という状態を病気と考えるのか、否かということがある。 悲しみというものは、原因が無くならないと治療でどうこうなるものでは無い。 たとえば、喘息の患者さんが居るとして、喘息が治らないという場合、大抵、原因がある。 その原因というものは、周りの人たちがどうこう出来るものではなくて、そういうことが結構ある。 原因がある間、症状はずっと続き、治療だけでは解決し得ない。

*02節の「泣涕(きゅうてい)」であるが 「泣(きゅう)」は、なみだ、 『涕(てい)』というのは、はなみずのことである。


○04 歧伯曰。 05 心者。 06 五藏六府之主也。 07 目者。 08 宗脈之所聚也。 09 上液之道也。 10 口鼻者。 11 氣之門戸也。

04 歧伯(きはく)曰(いわ)く、 05 心(しん)は、 06 五藏六府(ごぞうろっぷ)の主(しゅ)なり。 07 目は、 08 宗脈(そうみゃく)の聚(あつ)まる所(ところ)なり。 09 上液(じょうえき)の道なり。 10 口鼻(こうび)は、 11 氣(き)の門戸(もんこ)なり。
(解説)
*08節の宗脈(そうみゃく)」というのは、「五藏六府(ごぞうろっぷ)の精(せい)というのが、みなあつまるところ」である。

*07節 「目(め)」: からだの状態を顕著にあらわすのが目である。 目を見ると相手の気の状態がよくわかる。 目は精気(せいき)があつまる場所である。

*09節の「上液(じょうえき)の道なり」というのは“なみだ”で潤うということから液を上(のぼ)らせる、その場所だと言う。


○12 故悲哀愁憂則心動。 13 心動則五藏六府皆揺。 14 揺則宗脈感。 15 宗脈感則液道開。 16 液道開。 17 故泣涕出焉。

12 故(ゆえ)に悲哀愁憂(ひあいしゅうゆう)すれば則(すなわ)ち心(しん)動く。 13 心(しん)動けば則(すなわ)ち五藏六府(ごぞうろっぷ)皆(み)な揺(ゆら)く。 14 揺(ゆら)けば則(すなわ)ち宗脈(そうみゃく)感ず。 15 宗脈(そうみゃく)感ずれば則(すなわ)ち液道(えきどう)開(あ)く。 16 液道(えきどう)開(あ)くる、 17 故(ゆえ)に泣涕(きゅうてい)出(い)づ。
(解説)
*ひとのこころというのは、自ら動くわけではない。 これはあくまでも他律的なものである。 自ら怒ることも、自ら悲しむことも、自ら喜ぶこともできない。 喜びも悲しみも怒りも、すべて外からやってくる。 自らの意識で勝手に怒ったりしているように見えるが、意識・感情というものはそういうものでは無いように思う。

風寒暑濕(ふうかんしょしつ)は人間の意志で、どうこうなるものでは無い。 悲しみ、喜び、憂いも自ら変えられない。 自ら意識して感情を変えられるように思うが、自分の意志というのはその上で活動していることであって、悲しみや、憂い、喜びなどを避けることはできない。 それで「心(しん)」が動く。 「心(しん)」というのは七情(しちじょう)をつかさどる場所である。 「心(しん)」が動ずれば五藏六府(ごぞうろっぷ)が、みな動ずる。 これは七情を説明している。 七情というものは五蔵六府(ごぞうろっぷ)、つまり陰(いん)の部分すべてに影響を与える。 これらに影響を与えると、 宗脈(そうみゃく)にその影響がおよぶ。 宗脈(そうみゃく)が影響を受けると、液道(えきどう)が開き、目から“なみだ”が、鼻から“はなみず”が出て来る。

*高齢になると涙目になる。泣いているわけでもないのに涙が止まらないということがある。 ここでは、あくまでも七情の気による“なみだ”についての説明である。


○18 液者。 19 所以灌精濡空竅者也。

18 液(えき)は、 19 精(せい)を灌(そそ)ぎ空竅(くうきょう)を濡(うるお)す所以(ゆえん)の者なり。

(解説)
*18節の「液(えき)」である。 後の時代には「津液(しんえき)」という言葉が出て来るが『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』の中では「津(しん)」と「液(えき)」というものはあまり使われない。 ここで、ひろく言われている「液(えき)」というものは液体成分を指す。

*19節の「空竅(くうきょう)」というのは「まなこ」の部分を指す。 

*張介賓(ちょうかいひん)という人はこのように言っている。
「精由液而化、 孔竅得液而充、 故以灌精濡孔竅也。 

【 精(せい)は液をして化(か)し、 孔竅(こうきょう)液をして充(み)つる。 故(ゆえ)に以(もっ)て精(せい)を灌(そそ)ぎ、孔竅(こうきょう)を濡(うるお)すなり。 】

*“精(せい)”の気というのは、通常でも上るのであるが、陰が虚(きょ)すと、もっともっと上り過ぎて涙がどんどん出て来る。


○20 故上液之道開則泣。 21 泣不止則液竭。 22 液竭則精不灌。 23 精不灌則目無所見矣。 24 故命日奪精。

20 故(ゆえ)に上液(じょうえき)の道開(あ)けば則(すなわ)ち泣(なみだ)あり。 21 泣(なみだ)止(や)まざれば則(すなわ)ち液(えき)竭(つ)く。 22 液(えき)竭(つ)けば則(すなわ)ち精(せい)、灌(そそ)がず。 23 精(せい)、灌(そそ)がざれば則(すなわ)ち目(め)見る所(ところ)無し。 24 故(ゆえ)に命(な)づけて奪精(だっせい)と曰(い)う。
(解説)
*本当に涙が止まらなくて、最後に目が見えなくなるかどうかというのはわからない。 ここでは、どんどん液が出てくるということで、液が尽きてしまうということがあるのだと言っているのだろう。


○25 補天柱經挟頸。

25 天柱(てんちゅう)、經(けい)の頸(くび)を挟(はさ)むを補う、 と。

(解説)
*「天柱(てんちゅう)」と「經(けい)の頸(くび)を挟(はさ)む」というのは同じ意味である。 天柱穴を治療しなさいと言っている。


*『霊枢』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会館3階です。勉強会の案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は2024年11月10日(日)、『霊枢』「師傳(しでん) 第二十九」です。

(霊枢のテキストは現在1冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)


(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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