公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

霊枢勉強会報告 令和五年五月

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和五年(2023年)5月14日(日)第26回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員33名(うちWeb23名) 一般27名(うちWeb16名) 学生46名(うちWeb45名)
*5月度は会場22名、ネット配信での受講が84名でした。

○『黄帝内經靈樞』 經筋(けいきん)第十三・第三章(一部を抜粋)

○01 足陽明之筋。 02 起于中三指。

01 足の陽明(ようめい)の筋は、 02 中の三指(さんし)に起こり、
(解説)
*02節「中の三指(さんし)」は、足の第三指のことである。張介賓(ちょうかいひん)という人は、「厲兌(れいだ)の傍(かたわ)ら」と言っているがこれはまずいと思う。

**厲兌(れいだ): 部位 足の第2指,末節骨(まっせつこつ)外側,爪甲角の近位(きんい)外方1分(指寸),爪甲外側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点.
(『新版 経絡経穴概論 拡大版』134ページ、2009年4月20日 第1版 日本理療科教員連盟/社団法人東洋療法学校協会編、(株)医道の日本社発行 より引用した)


○03 結于跗上。 04 邪外上加于輔骨。 05 上結于膝外廉。 06 直上結于髀樞。 07 上循脇。 08 屬脊。

03 跗上(ふじょう)に結(あつ)まり、 04 邪(なな)めに外に上(のぼ)って輔骨(ほこつ)に加わり、 05 上って膝の外廉(がいれん)に結(あつ)まり、 06 直(ちょく)に上って髀樞(ひすう)に結(あつ)まり、 07 上って脇を循(めぐ)って、 08 脊(せき)に屬(ぞく)す。

(解説)
*「跗上(ふじょう)」は足の甲の部分、「輔骨(ほこつ)」は外輔骨(がいほこつ)のことであろう。「髀樞(ひすう)」は大転子(だいてんし)の部分である。

*07~08節は、脇のほうから脊柱の真ん中の方に行くと言っている。

*流注とはなんだろうか。ここに記されている文章を絵に描いてみることはけっこう多い。絵で見ればよくわかるだろうということである。しかし、これらの文章を本当に絵に描けるのかは疑問がある。経脈図もそうであるが、経筋の図なども絵に描いてある。しかし本当はここにある文章から絵は描けないのではないかと思う。ある部分とある部分が関係しているということを文章で表しているのであって、絵の中で線を引いてしまうと、引いた線の部分にも意味を持たせることになるのではなかろうか。


○09 其直者。 10 上循骭。 11 結于膝。

09 其(そ)の直(ちょく)なる者は、 10 上って骭(かん)を循(めぐ)って、 11 膝に結(あつ)まる。


(解説)
*10節の「骭(かん)」は、脛骨(けいこつ)のことである。原本の『明刊無名氏本(みんかんむめいしぼん)』では「髀(ひ)」になっている。しかし「髀(ひ)」は大腿骨のことなので、上の方過ぎる。『太素(たいそ)』という本では「䯒(こう)」となっていて、これも脛骨のことなのでこちらでも良い。

*11節の「膝」という文字は原本では空白になっている。澀江抽齋(しぶえ ちゅうさい)は『靈樞講義(れいすうこうぎ)』において『太素(たいそ)』や『甲乙經(こういつきょう)』という本に従って「膝」の字をここに補うと言っている。


○12 其支者。 13 結于外輔骨。 14 合少陽。

12 其(そ)の支(し)なるものは、 13 外輔骨に結(あつ)まりて、 14 少陽(しょうよう)に合(がっ)す。

(解説)
*13,14節は、外輔骨の部分で少陽(しょうよう)の筋と一緒になると言う。


○15 其直者。 16 上循伏兔。 17 上結于髀。 18 聚于陰器。 19 上腹而布。

15 其(そ)の直(ちょく)なる者は、 16 上って伏兔(ふくと)を循(めぐ)り、 17 上って髀(ひ)に結(あつ)まり、 18 陰器(いんき)に聚まり、 19 腹に上って布(し)き、


(解説)
*18節「陰器(いんき)」は生殖器のこと。

*19節「腹に上って布き」、ここで「布(し)く」というのは、広がるということ、楊上善(ようじょうぜん)という人は「布」は分布だと言う。おなかに広がっていって、というふうに解釈している。


○20 至缺盆而結。 21 上頸。 22 上挾口。 23 合于頄。 24 下結于鼻。 25 上合于太陽。

20 缺盆(けつぼん)に至(いた)って結(あつ)まる。 21 頸(けい)に上(のぼ)り、 22 上って口を挟(はさ)み、 23 頄(きゅう)に合(ごう)し、 24 下って鼻に結(あつ)まり、 25 上って太陽(たいよう)に合(ごう)す。

(解説)
*張介賓(ちょうかいひん)という人はこんなふうに言っている。
「自缺盆、上頸中人迎穴、乃循頤頬、上挟口吻、與陽蹻會於地倉、上合於觀髎、下結於鼻旁、復上睛明穴、合於足太陽」
こんなふうに経穴の名前を入れてなんとなくイメージを出そうとしている。


○26 太陽爲目上網。 27 陽明爲目下網。

26 太陽(たいよう)は目の上網(じょうもう)爲(た)り。 27 陽明(ようめい)は目の下網(かもう)爲(た)り。

(解説)
*この内容と似た内容が「論疾診尺(ろんしつしんしゃく)第七十四」という篇にも出て来る。


○28 其支者。 29 從頬。 30 結于耳前。

28 其(そ)の支(し)なる者は、 29 頬(ほお)より、 30 耳前(じぜん)に結(あつ)まる。

(解説)
*29~30節は、頬から耳の前の方に行くと言っている。


○31 其病足中指支脛轉筋。 32 脚(本字は「去」の部分が「谷」になっている)跳堅。

31 其(そ)の病(やまい)は、足(あし)の中指(ちゅうし)、脛(けい)に支え轉筋(てんきん)し、 32 脚(きゃく)跳堅(ちょうけん)す。

(解説)
*31節の「中指」は足の第三指、脛(けい)は、すねのことである。足の第三指からすねの方に向かって、突っ張って轉筋(てんきん)すると読んでおくのがもっとも良いと思う。

*32節の「脚(きゃく)」は下肢のことを指す。張介賓(ちょうかいひん)という人の注解にしたがえば「跳堅(ちょうけん)」は「跳(ちょう)」は「跳動(ちょうどう)」つまり動き、「堅(けん)」は「堅強(けんきょう)」かたくなるのである。これは痙攣したり、あるいは緊張したりするということの言い換えだというふうに、取りあえず解釈しておきたい。


○33 伏兔轉筋。 34 髀前腫。 35 かい(本字はやまいだれ「疒」の中に「貴」)疝。

33 伏兔(ふくと)轉筋(てんきん)し、 34 髀(ひ)の前(まえ)腫(は)れ、 35 かい疝(かいせん)し、

(解説)
*33節の「伏兔(ふくと)轉筋(てんきん)し」というのは大腿部がこむらがえり様になることを指す。

*34節の髀(ひ)は大転子(だいてんし)のことである。

*35節の「かい疝」というのは積聚(しゃくじゅ)のような硬結が起こって、しかも痛むものを言う。ここでは脚からおなかの方に症状が出るということを言っている。


○36 腹筋急。

36 腹筋、急(きゅう)なり。

(解説)
*おなかの筋、ここで筋とは現在の腹筋みたいなものだと思っていれば良い。


次回は7月9日(日)骨度第十四に進みます。


(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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