公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

霊枢勉強会報告 令和五年二月

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和五年(2023年)2月12日(日)第23回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員33名(うちWeb22名) 一般21名(うちWeb11名) 学生21名(うちWeb21名)
*2月度は会場21名、ネット配信での受講が54名でした。

○『黄帝内經靈樞』經脈第十(その四)

○『黄帝内經靈樞』
 經脈第十・第二十六章

○01 足太陰之別。
 02 名曰公孫。
 03 去本節之後一寸。
 04 別走陽明。
 05 其別者。
 06 入絡腸胃。
 07 厥氣上逆則霍亂。
 08 實則腸中切痛。
 09 虚則鼓脹。
 1 0 取之所別

01 足の太陰(たいいん)の別(べつ)は、 02 名づけて公孫(こうそん)と曰(い)う。 03 本節(ほんせつ)の後(しりえ)を去ること一寸、 04 別(わか)れて陽明(ようめい)に走る。 05 其(そ)の別(べつ)なる者は、 06 入(い)りて腸胃(ちょうい)を絡(まと)う。 07 厥氣(けっき)上逆(じょうぎゃく)すれば則(すなわ)ち霍亂(かくらん)す。 08 實(じっ)すれば則(すなわ)ち腸中(ちょうちゅう)切痛(せっつう)し、 09 虚(きょ)せば則(すなわ)ち鼓脹(こちょう)す。 10 之(これ)を別(わか)れる所に取るなり。
(解説) *02節で「公孫(こうそん)」というつぼの名前が使われている。經脈(けいみゃく)とつぼが一体化した状態の文章は新しいと見ておかないといけない。本節の後(しりえ)を去ること一寸が、公孫(こうそん)の位置である。

*06節の「入りて腸胃(ちょうい)を絡(まと)う」というのは、腸胃に関係しているということに他ならない。

*經脈(けいみゃく)の流注(るちゅう)というと皮膚の表面をずっとめぐっているようなイメージがある。しかし実際には、流注(るちゅう)はものすごくアバウトなものである。つぼの名前などで所々をピン止めしてやらないと理解できるものではない。つぼによるピン止めというのがある種の経絡経穴学(けいらくけいけつがく)というものである。經脈(けいみゃく)は、このピン止めでやっと形を整えたというふうに思う。

*07節の「厥氣(けっき)上逆(じょうぎゃく)すれば」とは、からだの中の「気(き)」が本来ならば、上のものは下り、下のものは上るのだが、めぐってはならないあらぬ方向に気がめぐる状態を指す。本来 はからだの上の方にある「気(き)」が下 れば足が温かくなり、からだの下の方に ある「気(き)」が上れば頭のほうが熱く ならずに冷える。しかし、これがそのよ うにならないのが「厥氣上逆(けっきじょ うぎゃく)」だと言える。「厥(けつ)」と いうのは、からだの上下のバランスを示 すとても重要な概念であり、この言葉は よく使われる。上のものは下に、下のも のは上にというふうに循環しなければな らないものが、そうならない時、「霍亂(か くらん)」が起こるという。

*「霍亂(かくらん)」は、吐瀉(としゃ)、 吐いたり、また下したりする症状である。

*08節の「腸中切痛(ちょうちゅうせっ つう)」とは、おなかが痛むということで ある。「腹痛する」ではなく「腸中切痛 (ちょうちゅうせっつう)」という場合は けっこうきつい症状を指す。

*09節の「鼓脹(こちょう)」は、おなか が張るという状態である。

*この章は足の太陰(たいいん)の病であ り「脾の気」が関係している。「脾(ひ)」 という蔵(ぞう)に関係が深い病態であ る。

*先ほどわたしは経脈というものが、流注 というものをつぼでピン止めしたと言っ た。経脈(けいみゃく)というものは取 りとめのないものなので蔵府(ぞうふ) ともピン止めしてある。経脈と蔵府との 関係は、有るような無いようなところが ある。蔵府と経脈の関係は、とても古い 段階からピン止めされているように見え る。しかし、それは実際に思うよりも微 妙である。たとえば肺という蔵(ぞう) の病(やまい)で経脈のことを理解しよ うとすると、どこか変になるのである。 これは経脈を運用すると、すぐにわかる。 蔵(ぞう)の変動を示す病證(びょうしょ う)と経脈(けいみゃく)」の変動を示す 所見は必ずしも一致しない。

○『黄帝内經靈樞』
 經脈第十・第二十七章

○01 足少陰之別。 
 02 名曰大鍾。 
 03 當踝後繞跟。 
 04 別走太陽。 
 05 其別者。 
 06 并經上走于心包。 
 07 下外貫腰脊。 
 08 其病氣逆則煩悶。 
 09 實則閉癃。 
 10 虚則腰痛。 
 11 取之所別也。

01 足の少陰(しょういん)の別(べ つ)は、 02 名づけて大鍾(だい しょう)と曰(い)う。 03 踝(か) の後(しりえ)に當(あ)たりて跟(こ ん)を繞(めぐ)り、 04 別(わか) れて太陽(たいよう)に走る。 05  其(そ)の別なる者は、 06 經(け い)を并(あわ)せて上(のぼ)りて 心包(しんぽう)に走り、 07 下 (くだ)って外(そと)に腰脊(よう せき)を貫(つらぬ)く。 08 其 (そ)の病(やまい)、氣逆(きぎゃく) すれば則(すなわ)ち煩悶(はんもん) す。 09 實(じっ)すれば閉癃 (りゅうへい)し、 10 虚(きょ) せば則(すなわ)ち腰痛す。 11  之(これ)を別(わか)れる所に取る なり。


(解説)
*経脈における経穴の順番と流注が矛盾し ていると言われる時、よく引き合いに出 されるのが「足の少陰(しょういん)」で ある。つぼの並んでいる順番は『鍼灸甲 乙經(しんきゅうこういつきょう)』と いう本に載せてある順番という意味であ ろう。この順番で経脈の流注を構成して いくと経脈がくるっと一回転する。アク ロバットのような流注である。おそらく これは、経脈の流注と経穴の順序という ものが、必ずしも一緒になって出てきた ものでは無いということと関係があるの だと思う。そういう例は多数ではないが、 所々にそういうところがある。

*経穴の順番は、何の矛盾もないみたいな 感じがする。しかしこれがなかなか悩ま しいものである。所々でジグザグしたり するものがあったりする。これは、やは り経脈の流注(るちゅう)のとおりに経 穴の順番がなっていないからだと思う。

*03節「跟(こん)」は、かかとのこと である。

*06節の「經(けい)を并(あわ)せて」 というのは、本経(ほんけい)と一緒に なってという意味である。

*06節で「腎(じん)」という蔵(ぞう) と「心包(しんぽう)」は関係があるこ とを示している。

*08節の「煩悶(はんもん)す」とは胸 苦しくなるということである。なぜか胸 がもやもやして落ち着かない。

*09節の「閉癃(りゅうへい)」という のは、小便が閉、出ないのを言う。普通 は小便が出ないものを「癃(りゅう)」 という。後の時代には「淋(りん)」と 呼ばれることとなる。ここで言う「閉癃 (りゅうへい)」というのはとても強い表 現であり、小便がまったく出ないものを いう。

*足の少陰の病證(びょうしょう)には「煩 悶(はんもん)」と「閉癃(りゅうへい)」 と「腰痛」の三つがあることがわかる。

*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜、午前10時か ら12時まで大阪府鍼灸師会館3階 です。勉強会のご案内につきまして は本会ホームページをご確認下さい。 次回は4 月9 日( 日)「經水 第 十二」です。

(霊枢のテキストは現在5冊の在庫が あります。1冊1,600円です。受 講申し込み時、または当日、受講受 付けにてお問い合わせください)



(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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