公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

霊枢勉強会報告 令和四年一月

講師: 日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時: 令和4年1月9日(日) 第10回
会場: 大阪府鍼灸師会館 3階  出席者: 会員21名(うちWeb15名) 一般14名(うちWeb5名) 学生11名(うちWeb11名)
*1月度は会場15名、ネット配信での受講が31名でした。

『黄帝内經靈樞』邪氣藏府病形(じゃきぞうふびょうけい)第四 ・ 第七章(抜粋)
○01 心脈急甚者。 02 爲瘛瘲。
【 01 心(しん)の脈(みゃく)急(きゅう)甚(はなは)だしき者(もの)は、 02 瘈瘲(けいしょう)を爲(な)す。 】
(解説)
*「心の脈」とは浮いている脈のことである。心の脈は浮いて太い。

*急: がある。急は、早く動くということである。緊張していることを表すのに使うこともあるが、ここではが対になっているので、急行のである。
瘈瘲(けいしょう)というのは、辞書を引くと「子供のけいれんする状態」を指すのだと言われる。ここでは、けいれん様の症状ということであろう。
*古い注解では緩急、小大、滑濇(かつしょく)の脈状で、濇(しょく)は陰性の脈、すなわちの脈に分類される。の三つはの脈に分類される。それを基本に読んで頂ければ良いと思う。
*心の脈は五蔵のなので、もちろん陽の脈である。というのはの脈、熱と寒の状態が混じり合った状態の脈の時に瘈瘲(けいしょう)、急にひきつったような状態になるのだと言う。


○03 微急。 04 爲心痛引背。 05 食不下。 【 03 微(すこ)しき急(きゅう)なるは、 04 心(むね)痛みて背(せ)に引き、 05 食(しょく)下(くだ)らざるを爲(な)す。 】
(解説)
*ここでは、脈状の急の状態がそれほどでもない場合には、胸と背中が痛んで、食べたものが下りていかない、と言っている。


○06 緩甚。 07 爲狂笑。 【 06 緩(かん)甚(はなは)だしきは、 07 狂笑(きょうしょう)することを爲(な)す。 】
(解説)
*脈の状態が緩(かん)、これは熱の状態を表している。

*狂笑(きょうしょう)は精神的に不安定になって、よく笑う状態である。心のの状態である。


○08 微緩。 09 爲伏梁在心下。 10 上下行。 11 時唾血。
【 08 微(すこ)しき緩(かん)なるは、 09 伏梁(ふくりょう)、心下(しんか)に在(あ)りて、 10 上下に行き、 11 時(とき)に唾血(だけつ)することを爲(な)す。 】

(解説)
*「伏梁(ふくりょう)」というのは、積聚(しゃくじゅう)の一つである。心の積(しゃく)であり『難経』に書いてある。
**参考までに『難経』「五十六難」の一節を入れておきます。(松本)
「 心之積、名曰伏梁。起齊上、大如臂、上至心下。【 心の積を名けて伏梁(ふくりょう)と曰(い)う、 齊の上に起って大さ臂の如(ごと)し、上(かみ)心下に至る 】 」
(経文については『難経集註(なんぎょうしっちゅう)』臺灣中華書局 発行を引く。ただし句読点については『難経解説』南京中医学院編、戸川芳郎監訳、東洋学術出版社発行、2003年5月、第二版第三刷301ページを参考にした。訓読は、『難経の研究』、本間祥白著、井上恵理校閲、医道の日本社発行、1976年12月 第5版214ページを参考にした。)

*「心下」は、みずおち(みぞおち)のこと。伏梁が上下に移動して唾に血が混じる。病態の説明は楊上善(ようじょうぜん)と張志聰(ちょうしそう)という人がしている。


○12 大甚。 13 爲喉かい【かいは口(くちへん)に介】 
【 12 大(だい)甚(はなは)だしきは、 13 喉かい(こうかい)を爲(な)す。 】

(訳文)
*脈が浮いて太さがはなはだしい場合は、喉かい【かいは口(くちへん)に介】、のどが詰まったような、ぜいぜいという状態となる。 


○14 微大。 15 爲心痺引背。 16 善涙出。
【 14 微(すこ)しき大(だい)なるは、 15 心(むね)痺(しび)れて背(せ)に引き、 16 善(よ)く涙出(いず)ることを爲(な)す。 】

(解説)
善(よ)く: たくさんという意味である。
(訳文)
*脈の大なる状態がわずかな場合には、胸苦しくなり眼からたくさんの涙が出る状態となる。


○17 小甚。 18 爲善噦。 
【 17 小(しょう)甚(はなは)だしきは、 18 善(よ)く噦(えつ)するを爲(な)す。 】

(解説)
*小(しょう)甚(はなは)だしき: ここでは浮いて細い脈のこと。
(えつ): しゃっくりのこと。
*楊上善(ようじょうぜん)という人は、この状態に対して心の気が冷えている状態なのだというような注をつけている。張介賓(ちょうかいひん)は、陽の気が虚しているために、陽虚になって中焦のが起こり、そこでしゃっくりが起こると言う。しゃっくりは、まさに陽虚の症状である。
(訳文)
*脈が浮いて細い場合は、たくさんしゃっくりをする。


○19 微小。 20 爲消癉。
【 19 微(すこ)しき小(しょう)なるは、 20 消癉(しょうたん)を爲(な)す。 】

(解説)
*微(すこ)しき小なるは: ここでは浮いて細い状態が、はなはだしくない脈状を言う。
*消癉(しょうたん): 癉(たん)というのは熱の状態のことである。消癉(しょうたん)は内熱がありだんだん痩せてくる状態を言う。


○21 滑甚。 22 爲善渇。
【21 滑(かつ)甚(はなは)だしきは、 22 善(よ)く渇(かわ)くを爲(な)す。 】

(解説)
*滑(かつ)甚(はなは)だしき: ここでは浮いて滑の脈がはなはだしいものを言う。
*脈は小大滑濇緩急も複合したらどうなるのかという問題はある。それは一先ず横に置いて、この文章だけを考えると、という脈の状態は熱がある状態なので、よく渇(かわ)くという状態になる。


○23 微滑。 24 爲心疝引臍。 25 小腹鳴。
【 23 微(すこ)しき滑(かつ)なるは、 24 心疝(しんせん)臍(へそ)に引き、 25 小腹(しょうふく)鳴ることを為(な)す。 】

(解説)
*心疝(しんせん): 疝(せん)は痛むということである。
*心疝(しんせん)臍(へそ)に引き: みぞおちの辺りから、へその辺りまで痛みが走って
*小腹鳴る: 下腹部が鳴る。

*現在ではこういう状態を診ている人は、いないと思う。おそらく中国でもいないと思う。しかしこれが大事なのは五蔵の状態を滑(かつ)や濇(しょく)などの脈状で診ることによって、このような病態が想定されるのではないかという、ものの見方である。


さらに勉強したい方のために】
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp)
渋江抽斎 ⇒ 検索 黄帝内経霊枢24巻首1 巻で『靈樞講義』のマイクロフィルム画像を見ることが出来ます。

**Fresh2022年2月号『霊枢勉強会十二月』の文章で「虚邪風」のことを「虚邪風」と聴き間違えて書いておりました。ごめんなさい。「虚邪賊風」が正しいです。(松本)

*『霊枢』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜、午前10時から12時まで大阪府鍼灸師会館3階です。COVID-19感染予防対策の下、勉強会のご案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。2022年3月13日(日)は「根結第五」です。お楽しみに。

(霊枢のテキストは現在5冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)

素問勉強会世話人 東大阪地域
松本政己

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