スポーツ鍼灸ボランティア
第50回 大阪ろうあ者スポーツ大会 サポートボランティア活動報告[2023/07/23]
7月23日、大阪市舞洲障がい者スポーツセンターにて、大阪聴覚障害者協会主催の『第50回大阪ろうあ者スポーツ大会』が開催され、大阪府鍼灸師会より岩先生と共にスポーツボランティアとして参加させていただきました。
今大会は、式辞でも「みんなが参加する文化祭」と度々言われるほど、聴覚障害者だけでなく一般のボランティアの人も参加して活発にコミュニケーションを図る、まさに「共生」を実現した活気ある大会です。今大会はヨガ、ボッチャ、eスポーツ、モルックの種目が行われました。
大阪府鍼灸師会は、今大会において救護係を務めると共に、利用者さんへのストレッチ、パイオネックス、電子温灸器のサービスを提供するスポーツボランティアを行いました。幸いにも大会開催中に大きな負傷はなく、多くの参加者さんにサービスを利用していただきました。
耳は情報を得るための重要な感覚器官です。また、会話をするためには聴覚の働きが不可欠となります。その器官の働きを補うとなれば、他の器官や神経系にも大きな負担がかかる事が考えられます。今大会のサービス利用者様において頚肩部の筋緊張や凝りが強い人が多く、症状からもそういった特徴が見受けられました。その一方で、ジェスチャーや手振りなど少しのやり取りからもこちらの伝えたい概要をつかんでおられ、内容を把握する事やイメージをつかむ事にはとても長けているとも感じました。
聴覚障害者の方々が社会生活で直面する一番の問題は、コミュニケーションにあると聞きます。主なコミュニケーション手段である手話は独立した一つの言語、いわば外国語のようなものでもあり、まだまだ手話者の数が少ない事が聴覚障害者の方が日常生活やスポーツをする上で大きな障壁となっていると大会関係者や手話通訳の方が仰っていました。
現代の社会においても聴覚障害者の方々の障壁となる事は多く残っているのかもしれません。パラリンピックの中にも聴覚障害者の競技は含まれていないという事があります。しかし、今大会の開会式でも聴覚障害者の世界大会であるデフリンピックが日本で開催される事に決まったと発表がありました。日本での開催は初めてです。そういった事からも聴覚障害者の方々が一丸となって前向きに歩んで来られている動勢を感じる事ができました。
また、今大会でもサービスの利用者様は皆、我々鍼灸師に心を開き身体を任せていただいていたように思います。これは、以前から鍼灸師会が、ろうあ者大会にボランティアとして参加して築いた信頼関係や、身近な距離でコミュニケーションを取りながら施術を行うという鍼灸師の業の強みではないかと思いました。実際、利用者様からも「どこに行ったらこういう事をしてもらえるのか」、「自分の住んでいる所で良い鍼灸院はないか」等の質問を受け、鍼灸に対し強い関心を持って頂いていると感じました。
様々な可能性を持った鍼灸というもの、また我々鍼灸師という存在を広く知ってもらい、そこで受け入れてもらえる事ができたなら、鍼灸師は社会のあらゆる場面で活躍、社会貢献していく事もできるのではないかと思いました。
河北地域・スポーツ鍼灸プロジェクト委員会副委員長 片岡昌彦