霊枢勉強会報告
報告霊枢勉強会報告
講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生日時 :令和八年(2026年)9月13日(日)第65回(その1)
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:15名
○『靈樞講義』校注 卷第十六 論痛(ろんつう) 第五十三
○『黄帝内經靈樞』 論痛(ろんつう) 第五十三・ 第一章
○01 黄帝問于少兪曰。 02 筋骨之強弱。 03 肌肉之堅脆。 04 皮膚之厚薄。 05 腠理之疎密。 06 各不同。 07 其于針石火焫之痛何如。 08 腸胃之厚薄堅脆。 09 亦不等。 10 其於毒藥何如。 11 願盡聞之。
01 黄帝(こうてい)、 少兪(しょうゆ)に問うて曰(いわ)く、 02 筋骨(きんこつ)の強弱、 03 肌肉(きにく)の堅脆(けんぜい)、 04 皮膚の厚薄(こうはく)、 05 腠理(そうり)の疎密(そみつ)、 06 各々同じからず。 07 其(そ)れ針石(しんせき)火焫(かぜつ)の痛みに于(お)いて何如(いか)ん。 08 腸胃(ちょうい)の厚薄(こうはく)堅脆(けんぜい)、 09 亦(ま)た等(ひと)しからず。 10 其(そ)れ毒藥(どくやく)に於(お)いて何如(いか)ん。 11 願わくば盡(ことごと)くに之(こ)れを聞かん、 と。
(解説)
*03節の「堅脆(けんぜい)」とは、 堅(かた)いか、脆(もろ)いかということである。
*04節の「皮膚」と05節の「腠理(そうり)」というものは、どこが違うのか。 「腠理(そうり)」というのは皮膚の中にある汗を出す肌理(きめ)のようなものを指す。 皮膚と腠理(そうり)がごちゃごちゃになって論ぜられ、 皮腠(ひそう)なんて言葉があるくらいであるが、 ここでは二つを分けて説明している。 腠理(そうり)は密であれば、簡単に汗は出ない。 疎(そ)であれば、何かあった時にすぐに汗がどんどんと出て来る。
*06節で「各々同じからず」と言っている。 筋骨の強弱、 肌肉(きにく)の堅脆(けんぜい)、 皮膚の厚薄(こうはく)、 腠理(そうり)の疎密(そみつ)は、 人によって違っていることを述べている。
*07節の「針石(しんせき)」は皮膚を破る針か。 火焫(かぜつ)は灸(きゅう)のこと。 施術する時の痛みにおいて、 人それぞれの違いはあるのかと、 黄帝は少兪(しょうゆ)に問うている。
*08節「腸胃(ちょうい)の厚薄(こうはく)堅脆(けんぜい)」は、 その当時、解剖して一々見るわけでもなく、CTでそれを見るわけでもない。 これは外見から観察した食物を摂取する様であろうか。 たくさん食物を摂取しても胃がもたれない、 あるいは簡単にもたれたりする、 というようなことを表現していようか。
*10節の「毒藥(どくやく)」とは、 ここでは「毒物」の「毒」ではなくて、 人のからだに何らかの効果を与えるものを指す。 もちろん悪い効果があれば人に苦痛を与えたり死亡させたりするものである。 しかし良い効果があれば有用なものである、 という意味の「毒藥(どくやく)」である。
*「火焫(かぜつ)」の「焫(ぜつ)」の字は、 「爇(ねつ)」と同じだと『大漢和辞典』は記す。 「爇(ねつ)」は、焼ける、燃やすという意味がある。 「火焫(かぜつ)」は、火によって焼けたという意味である。 これは今で言う、灸(きゅう)を指すのであろう。
○12 少兪曰。 13 人之骨強筋弱肉緩皮膚厚者。 14 耐痛。 15 其于針石之痛。 16 火焫亦然。
12 少兪(しょうゆ)曰(いわ)く、 13 人の骨(こつ)強く、 筋(きん)弱く、 肉(にく)緩(ゆる)く、 皮膚厚(あつ)き者は、 14 痛みに耐(た)ゆ。 15 其(そ)れ針石(しんせき)の痛みに于(お)いても、 16 火焫(かぜつ)も亦(ま)た然(しか)り、 と。
(解説)
*13節の「骨(こつ)強く」というのは、 この時代は骨密度を調べる機器もないので骨(こつ)の強さの意味が違う。 太い、ゆるがない、じっとしていられるというようなことの総称であろうか。 「筋(きん)弱く」「肉(にく)緩(ゆる)く」というのは、骨(こつ)よりも浅部にある、弾力性のあるものが、やわらかく、或いは緩(ゆる)いということであろうか。 そんな人は痛みに強いということを述べている。
*「皮膚厚く」というのはある程度のかたさや、緊張を含めて「厚き」と言っているのだと思う。 骨格がしっかりしていて、 筋や肉というものが柔軟で、 皮膚の体表の守りがしっかりしている人は、 針を刺しても灸をしても大丈夫なのだと言っている。
*「針石(しんせき)」という言葉はよく出てくる表現である。 「砭石(へんせき)」と言われるものと同じと考えて良いと思う。 わたしは石というものが、 どの程度医療に使われていたのか、 それを疑問に思っている。 針の道具としての「石」とすると、 鉄製の針に比べると細く作ることがむつかしいように思う。 どうしても出血させたり膿(うみ)を取り除いたりするものにしか使えない、 そんなふうに思う。 「針石(しんせき)」というのは元々、普通の針ではなく、皮膚を破るためのものだと思っている。
*16節の「火焫亦然。」の「亦」の字が『明刊無名氏本(みんかんむめいしぼん)』では「已」になっている。 澀江抽齋(しぶえ ちゅうさい)は、『靈樞講義(れいすうこうぎ)』において「已」を「亦」という字に改めている。 その理由は色々なテキストが「已」の字を「亦」に改めていること、 また、これ以下の文章に「火焫(かぜつ)亦(ま)た然(しか)り」があることを根拠にしている。
○17 黄帝曰。 18 其耐火焫者。 19 何以知之。 20 少兪荅曰。 21 加以黒色而美骨者。 22 耐火焫。
17 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 18 其(そ)の火焫(かぜつ)に耐(た)える者、 19 何(なに)を以(もっ)てか之(こ)れを知らん、 と。 20 少兪(しょうゆ)荅(こた)えて曰(いわ)く、 21 加(くわ)うるに黒色(こくしょく)にして美骨(びこつ)なるを以(もっ)てする者は、 22 火焫(かぜつ)に耐(た)ゆ、 と。
(解説)
*21節の「美骨(びこつ)」の「美」という字は、 注解者によっては「大きい」という意味に解釈する人もいる。 張介賓(ちょうかいひん)という人は、 このように言う。
「美骨者、 骨強之謂。 【 美骨(びこつ)は、 骨が強いものを謂(い)う。 】 」
骨強(こつきょう)という意味には、 触ってみて通常より骨(ほね)が太いという意味もある。 またからだを揺り動かしても容易に動かないということもあろうか。 そういうところから「美骨(びこつ)」の「美」という字は骨が強い、あるいは大きいという意味に解釈をしても構わないと思う。
*次回は 2026年11月8日(日) 逆順(ぎゃくじゅん)第五十五です。 いつものように第二日曜日、午前10時から12時まで開いております。 大阪府鍼灸師会三階の会場へ直接来ていただいても良いし、 ご自宅のパソコンでも受講できます。 なおさらに学生の方々には聴いて欲しいと願っています。 10月11日(日)は篠原先生の体調のご回復を何よりと考えて、休講といたしました。
初めて会場で受講される方にお知らせします。 休講の連絡などにも必要ですので初回にメールアドレスをお知らせ願いますよう。
*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 勉強会を続けるためにご理解いただきますよう、なにとぞ宜しくお願いいたします。
(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)
































