霊枢勉強会報告
報告『黄帝内經靈樞』論勇(ろんゆう)第五十
講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生日時 :令和八年(2026年)6月14日(日)第62回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員・関係団体17名 ,一般11名 合計28名(会場15名,web13名)
○『黄帝内經靈樞』論勇(ろんゆう)第五十・第一章
○01 黄帝問于少兪曰。 02 有人于此。 03 並行並立。 04 其年之長少等也。 05 衣之厚薄均也。 06 卒然遇烈風暴雨。 07 或病或不病。 08 或皆病。 09 或皆不病。 10 其故何也。
01 黄帝(こうてい)、 少兪(しょうゆ)に問うて曰(いわ)く、 02 此(ここ)に人(ひと)有らん。 03 並(なら)び行き並(なら)び立たん。 04 其(そ)の年の長少(ちょうしょう)等(ひと)しく、 05 衣(ころも)の厚薄(こうはく)均(ひと)しからん。 06 卒然(そつぜん)として烈風暴雨(れっぷう・ぼうう)に遇(あ)い、 07 或(ある)いは病(や)み、 或(ある)いは病(や)まず、 08 或(ある)いは皆(み)な病(や)み、 09 或(ある)いは皆(み)な病(や)まず、 10 其(そ)の故(ゆえ)何(なん)ぞや、 と。
(解説)
*概ね、このようなことを言っていようか。
「 01 黄帝(こうてい)は、 少兪(しょうゆ)という者に質問をした。 02 ここに人(ひと)が居る。 03 二人の者が一緒に歩いたり、 一緒に立ったりしている。 04 その二人の年齢は同じであり、 05 その二人の着衣は厚い薄いも同じ加減のものである。 06 その二人が急に風(かぜ)や雨に出会った時、 07 一人の人は病(やまい)の症状が起こり、 もう一人の人は症状が出ない、 08 あるいは二人ともに病(やまい)の症状が出る、 09 あるいは二人ともに症状が出ない、 10 その故(ゆえ)、 何ぞや。 」
*日本の訓読(くんどく)は、 「02 人(ひと)有らん」、 「03 並び行き並び立たん」というふうに読んでいる。 おそらくこれは、 訓読(くんどく)独特のニュアンスを出そうとして、このように読んでいるのだろう。 「02 人があると思って見てください」 「03 二人とも歩いたり立ったりしていることを思ってください」というように、 こういう場合を想定してくださいということで、 このような表現を使っているのだと思う。
○11 少兪曰。 12 帝問何急。
11 少兪(しょうゆ)曰(いわ)く、 12 帝(てい)問うこと何(いず)れか急(きゅう)なる、 と。
(解説)
*12節の「急(きゅう)」というのは、「 先か、後か。 」という意味の「先(さき)」のことである。 少兪(しょうゆ)は、黄帝に向かいこのように答えている。 「 どちらを先に答えましょうか。 」と。
○13 黄帝曰。 14 願盡聞之。 15 少兪曰。 16 春青風。 17 夏陽風。 18 秋涼風。 19 冬寒風。
13 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 14 願わくば盡(ことごと)くに之(こ)れを聞かん、 と。 15 少兪(しょうゆ)曰(いわ)く、 16 春は青風(せいふう)、 17 夏は陽風(ようふう)、 18 秋は涼風(りょうふう)、 19 冬は寒風(かんぷう)、
(解説)
*13 黄帝(こうてい)はこのように言う。 14 「 願わくば、すべてのことについて聴きたい。 」
*16節の「青風(せいふう)」は『甲乙經(こういつきょう)』という本では、「温風(おんぷう)」になっている。 「温風(おんぷう)」に変えるのが良いと思う。
*15節の人の名前は「少兪(しょうゆ)」とあるが 『甲乙經(こういつきょう)』では「岐伯(きはく)」となっている。 『甲乙經』は書き間違いということもあろうか。
○20 凡此四時之風者。 21 其所病各不同形。
20 凡(およ)そ此(こ)の四時(しじ)の風(ふう)は、 21 其(そ)の病(や)ましむる所(ところ)、 各々形(かたち)を同(おな)じうせず、 と。
(解説)
*20節の「四時(しじ)の風(ふう)」というのは、 空気の動きを示す風(かぜ)というものではない。 「風(ふう)」という言葉は邪氣(じゃき)の「邪(じゃ)」、 あるいは氣血(きけつ)の「氣(き)」と置き換えることも出来る。 『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』という本の中では、 その置き換えが出来る。
*「風(ふう)」は病気の原因をなすものとしての「邪(じゃ)」、あるいは「氣(き)」、そういうものを指すものと考えても良い。
○22 黄帝曰。 23 四時之風。 24 病人如何。 25 少兪曰。 26 黄色薄皮弱肉者。 27 不勝春之虚風。 28 白色薄皮弱肉者。 29 不勝夏之虚風。 30 青色薄皮弱肉。 31 不勝秋之虚風。 32 赤色薄皮弱肉。 33 不勝冬之虚風也。
22 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 23 四時(しじ)の風(ふう)、 24 人(ひと)を病(や)ましむること如何(いかん)、 と。 25 少兪(しょうゆ)曰(いわ)く、 26 黄色(おうしょく)薄皮弱肉(はくひ・じゃくにく)なるは、 27 春の虚風(きょふう)に勝(た)えず。 28 白色(はくしょく)薄皮弱肉なるは、 29 夏の虚風(きょふう)に勝(た)えず。 30 青色(せいしょく)薄皮弱肉なるは、 31 秋の虚風(きょふう)に勝(た)えず。 32 赤色(せきしょく)薄皮弱肉なるは、 33 冬の虚風(きょふう)に勝(た)えず、 と。
(解説)
*26節の「黄色(おうしょく)」、 28節の「白色(はくしょく)」、 30節の「青色(せいしょく)」、 32節の「赤色(せきしょく)」の色を、どの部分で見るのか、 これには二つの説がある。 一つは顔の色、 もう一つはからだ全体の色である。
*26~27節を訳すと、おおむねこんな感じであろうか。 「26 顔色あるいは皮膚の色が黄色く、 そして皮膚が薄くて、弱肉(じゃくにく)つまり皮膚の内側の弾力が弱くぶよぶよの人は、 27 春の温暖な状態ではない気候、 たとえば冷え込んだり、 夏日のようになったりした時には、 耐え得ない。」
*26節の「薄皮弱肉(はくひ・じゃくにく)」の中の「肉(にく)」という字は、 現在の医学用語の「筋(きん)」とは異なる。 現代の医学にも「中国医学」の言葉がたくさん使われている。 そんなこともあって現代の医学の言葉で、 中国医学を解釈する、そんなことが起こりうる。 しかし、26節で言われる「肉(にく)」というのは「皮(ひ)」のようにからだの表面にあるものではなく、 そして「脈(みゃく)」のように拍動するものでもなく、 からだの表面から押さえていくと、くぼみ、 押すのをやめると元に戻るものである。 「骨(こつ)」は押せども、それ以上くぼむことも無い堅(かた)いものを言う。
*次回は 2026年8月9日(日) 八月は年に一度の特別講義となります。 今年のテーマは、 「つぼの使い方」、 つぼを使う人、 使わない人、 つぼに興味のある人、 ない人、 色んな方々の、 ある種、 思考のきっかけになれれば良いなと、 そんなふうに思っております。 いつものように当日の午前10時から12時に開いております。 大阪府鍼灸師会三階の会場へ直接来ていただいても良いし、 ご自宅のパソコンでも受講できます。 周囲の方々へのご宣伝も、 なにとぞよろしくお願いいたします。 なおさらに学生の方々には聴いて欲しいと願っています。
*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 勉強会を続けるためにご理解いただきますよう。
(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)
































