公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告『黄帝内經靈樞』 五閲五使(ごえつごし) 第三十七 第一章NEW

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和七年(2025年) 5月11日(日) 第50回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会場 14名

『黄帝内經靈樞』 五閲五使(ごえつごし) 第三十七 第一章
○22 帝曰。  23 善。  24 五色獨決于明堂乎。
22 帝(てい)曰(いわ)く、  23 善(よ)し。  24 五色(ごしき)獨(ひと)り明堂(めいどう)に決するや、 と。
(解説)
*ここの文章を訳すと、このようになろうか。

帝(てい)は言った。
「わかった。 では、青・ 赤・ 黄・ 白・ 黒という五色(ごしき)を観る部位というのは、明堂(めいどう)ということで良いのか」と。

*ここで言うことには、顔の色もあるが、顔のかたちも含んでいる。

*24節の「明堂(めいどう)」とは、顔面あるいは鼻を中心にした顔面を指す。「明堂(めいどう)」という言葉自体は「鼻」のことを言うが、ここでの「明堂(めいどう)」は顔面を意味していよう。

○25 歧伯曰。  26 五官已辨。  27 闕庭必張。  28 乃立明堂。  29 明堂廣大。  30 蕃蔽見外。  31 方壁高基。  32 引垂居外。  33 五色乃治。  34 平博廣大。  35 壽中百歳。

25 歧伯(きはく)曰(いわ)く、  26 五官(ごかん)已(すで)に辨(わ)かち、  27 闕庭(けつてい)必ず張り、  28 乃(すなわ)ち明堂(めいどう)を立(た)つ。  29 明堂(めいどう)廣大(こうだい)に、  30 蕃蔽(はんへい)、 外(そと)に見(あら)われ、  31 方壁(ほうへき)高基(こうき)、  32 引き垂れて外に居(お)る。  33 五色(ごしき)乃(すなわ)ち治まり、  34 平博廣大(へいはくこうだい)なれば、  35 壽(じゅ)、 百歳なるに中(よろ)し。
(解説)
*26節の「五官(ごかん)已(すで)に辨(わ)かち」 というのは、診察には覩るべきからだの場所が必要であり、それがすでに分別されているのだと言っている。 たとえば肝(かん)の氣(き)は目で観る。 肺(はい)の氣(き)は鼻で察する。 腎(じん)の氣(き)は耳で察する、 それが五官(ごかん)已(すで)に辨(わ)かたれた状態だと言える。

*27節の「闕庭(けつてい)」について『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』上冊539ページには、このような記述がある。
「 “闕庭”: 兩眉之閒爲闕, 額部爲庭。 【 “闕庭(けつてい)”: 両眉の閒(かん)を闕(けつ)となす。 額部(がくぶ)の庭(てい)をなす。 】 」

*「闕庭(けつてい)」とは眉間(みけん)と額(ひたい)を指す。 闕庭(けつてい)が張るというのは、眉間からひたいにかけての色がくっきりとしている、あるいは、つやがあるという意味である。 また、おでこが高く張っている、 という意味もあろう。

*28節の「明堂(めいどう)を立つ」というのは、顔の診察が出来るようになるのだ、 と言っていようか。

*29節の「明堂(めいどう)廣大(こうだい)」は、ひたいが広いのであろう。

*30節の「蕃蔽(はんへい)」について『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』上冊539ページにこのようにある。
「 “蕃蔽”: 兩頬外側爲蕃, 耳門爲蔽。 【 “蕃蔽(はんへい)” 両ほほの外側を蕃(はん)となす。 耳門(じもん)を蔽(へい)となす。 】 」

*郭靄春(かくあいしゅん)という人は彼の著書の中でこのように記している。
「 蕃蔽: 馬蒔曰: “頰側謂之蕃, 耳門謂之蔽。” 【 蕃蔽(はんへい): 馬蒔(ばじ)はこのように言う。 “ ほほの側、これを蕃(はん)と言う。 耳門(じもん)、これを蔽(へい)と言う。 】 」

*ほほから耳にかけて張り出しているものが 「 蕃蔽見外。 【 蕃蔽(はんへい)外に見(あら)わる 】 」というものである。 外側に向かってほほから耳にかけて張り出していて、くぼんでいないものを指して、そのように言っている。

*31節の「方壁(ほうへき)高基(こうき)」について『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』上冊539ページにこのようにある。この解釈はとてもわかりやすい。

「 “方壁高基” 面部肌肉曰壁, 方壁即面方而肌肉豐厚。 下顎部曰基。 高基, 即指下顎部位高厚隆滿。 【 “方壁高基” 面部(顔)の肌肉(きにく)を壁(へき)と曰(い)う。 方壁(ほうへき)とは、すなわち面方(めんほう)、顔が四角で大きい、そして肌肉が豐厚(ほうこう)、つまり分厚くて、ふっくらしている。  下顎部のことを基(き)と曰(い)う。  高基(こうき)というのは下顎部が分厚いものを言う。 すなわち下顎部が高くて分厚くて盛り上がっているものを指す。 】  」

*32節の「引き垂れて外に居(お)る。」も、『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』に注が引かれている。  それによると、まず耳たぶが大きく垂れ下がっているものを上げている。 他にも孫鼎宜(そんていぎ)という人の解釈も引用している。 こちらの解釈では歯茎のことを言うのだと言う。 中国の注解者がこちらの解釈をいくつも引用している。 しかし、わたしは、耳たぶが大きく垂れ下がっている方の解釈を採りたい。

33節の「五色乃治。 【 五色(ごしき)乃(すなわ)ち治まる。 】 」というのは、五藏(ごぞう)の氣(き)の表れである五色(ごしき)が、安定した状態にあることを言っている。 「治(ち)」とは整った状態のことである。

34節の「平博廣大(へいはくこうだい)とは、どのようなものかと言うと、ここでは五色が安定した状態を指す。 真っ黒でも、真っ赤でも真っ黄色でも、真っ白でも真っ青でもない調和のとれた状態、そんなものを言っていよう。 これは病状のない一般の人の顔色が土台になっている。 やはり真っ青な顔や、真っ白な顔、真っ赤な顔というものは、見るとびっくりする。 これらを五藏(ごぞう)の不調和と見ている。 また五官(ごかん)、目、耳、口、鼻というものが安定したものも、平博廣大(へいはくこうだい)と言えるだろう。

*「平博廣大(へいはくこうだい)」を、そのまま解釈すると、顔面が広くて明明白白だというふうに読めてしまうが、この部分の諸家の注を読むと、やはり五官( ごかん, 目・舌・口・鼻・耳 )というものが平常な状態であることを指しているようだ。

*35節の「壽中百歳」について、郭靄春(かくあいしゅん)という人は、その著書においてこのように記している。
「中: 應當。 《廣韻・一東》: “中、宜也。” 」

*「35 壽(じゅ)、百歳(ひゃくさい)なるに宜(よろ)し。」

* 中国医学の特徴というのは未来を予見するということではない。 ここで 「壽(じゅ)、百歳になるに中(よろ)し。」 というのは、百歳まで生きますよ、ということではない。 現在のからだの状態から見ると予後は良いですよということの象徴として言っているだけである。 

*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は 7月13日(日)、『霊枢』「血絡論(けつらくろん) 第三十九」 です。 

八月の「霊枢勉強会」は特別講義となります。 年に一度、テーマを選んで篠原先生にご講義頂きます。お楽しみに。

(霊枢のテキスト〈日本内経医学会 発行,明刊無名氏本〉 は現在1冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)

(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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