公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

霊枢勉強会報告 『黄帝内經靈樞』 脈度(みゃくど)第十七・第三章NEW

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和五年(2023年)10月8日(日)第31回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員18名(うちWeb7名) 一般25名(うちWeb15名) 学生3名(うちWeb3名)
*10月度は会場21名、ネット配信での受講が25名でした。

○『黄帝内經靈樞』 脈度(みゃくど)第十七・第三章(一部を抜粋する)
○12 五藏不和。 13 則七竅不通。 14 六府不和。 15 則留爲癰。
12 五藏(ごぞう)和(わ)せざれば、 
13 則(すなわ)ち七竅(しちきょう)通(つう)ぜず。 
14 六府(ろっぷ)和(わ)せざれば、 
15 則(すなわ)ち留(とど)まりて癰(よう)を爲(な)す。

(解説)
*「七竅(しちきょう)」とは、七つのあなという意味であるが、あなが開いてない「舌(ぜつ)」も「竅(きょう)」の内に入る。 【 肺氣 ⇒鼻, 心氣 ⇒舌, 肝氣 ⇒目, 脾氣(ひき) ⇒口, 腎氣 ⇒耳に通ず 】
*「五蔵(ごぞう)が和(わ)せざる」とは、五蔵が虚(きょ)したり、実(じっ)したりというような不調和な状態を指す。
*「七竅(しちきょう)に通(つう)ぜず」というのは、目、耳、口、鼻にその表れが出るということである。この、もっとも顕著なものが、老齢化した時の、目や耳や口や鼻の状態である。ここでは老齢とともに不可逆的に七竅(しちきょう)、つまり目、耳、口、鼻が衰えていくということも含んで言っていようか。

*covid19のような特定の病症状の観点は伝統医学にはない。ただこのような特定の病症状になった時、七竅(しちきょう)、たとえば食べても食物の味がまったくしないという症状が出た時に五藏(ごぞう)の不和(ふわ)というふうに見る。
*15節の「癰(よう)を爲(な)す」というのは、からだの表面、皮膚の上に熱が加わるので、できものが出来る、それを言う。

○16 故邪在府。 17 則陽脈不和。 18 陽脈不和。 19 則氣留之。 20 氣留之。 21 則陽氣盛矣。
16 故(ゆえ)に邪(じゃ)、府(ふ)に在(あ)れば、 
17 則(すなわ)ち陽脈(ようみゃく)和(わ)せず。 
18 陽脈(ようみゃく)和(わ)せざれば、 
19 則(すなわ)ち氣(き)、之(こ)れに留(とど)まる。 
20 氣(き)、之(こ)れに留(とど)まれば、 
21 則(すなわ)ち陽氣(ようき)盛(さか)んなり。

(解説)
*16節の「邪(じゃ)」は外邪(がいじゃ)というだけではなくて、「府(ふ)の不調」のことも含むものと広く取っておいて良い。
*19節の「氣(き)」は「邪気(じゃき)」のことである。
*ここでは、邪(じゃ)が府(ふ)にあれば陽の経脈にあらわれる。陽の経脈が不調であれば、邪気を払うことが出来なくて、それによって陽の気が盛んになる、と言っている。
*この文章を見ると「府(ふ)」と経脈は結びつくものと思われる。脈診によって経脈の状態を診るということがなければこの問題は、割合すんなりと通じると思う。藏(ぞう)と府(ふ)があり、府(ふ)の方が病が浅く、浅い病は陽脈に出るのだ、(藏の病のように)深い病は陰脈に出るのだというふうに考えればわかりやすい。

○22 陽氣大盛。 23 則陰不利。
22 陽氣(ようき)大(はなは)だ盛(さか)んなれば、 
23 則(すなわ)ち陰(いん)、利(り)せず。

(解説)
*陽気がはなはだ盛ん、これは陽実(ようじつ)の状態であるが、からだがそのような状態になってくると、陰(いん)が利(り)せず、つまり陰が虚(きょ)すという状態になるのだ、という原則を述べている。このことを臨床的に解釈しようとすることは、いくらでも出来る。高い熱が出て、陽の気が大いに盛んだという時に、これを具体的な臨床的な所見として還元することが出来なければいけない。陽の気が盛んだ、ということの一番の象徴は、脈を診る時、浮いて滑(かつ)、実(じつ)の状態になっていることである。數(さく)、滑(かつ)、実(じつ)の脈状である。
もちろん、この時、皮膚の表面が熱かったり、呼吸が荒かったり、頭が痛くなるというように、からだの陽の部分にも症状があらわれる。
*23節の「陰、利(り)せず」というのは、陰が不調和になることを言っている。陽の気がどんどん盛んになる時、陰の気はどんどん消耗する。これを陽実陰虚(ようじついんきょ)の状態になるという。この時どのような症状があらわれるかを述べる。
「陰、利(り)せず」という時、陽がはなはだ盛んという状態が終った後に、立ちあがるとふらふらしたり、足腰が弱くなったり、からだがだるくなって、食欲もないという状態になる。

○24 陰脈不利。 25 則血留之。 26 血留之。 27 則陰氣盛矣。
24 陰脈(いんみゃく)利(り)せざれば、 25 則(すなわ)ち血(けつ)、之(こ)れに留(とど)まる。 26 血(けつ)、之(こ)れに留(とど)まれば、 27 則(すなわ)ち陰氣(いんき)盛(さか)んなり。

(解説)
*27節の「陰氣(いんき)盛(さか)んなり」というのは、「陰実(いんじつ)」とも言い換えられる。
*25節、26節にある「血(けつ)、之(こ)れに留(とど)まる」というのは、からだにあらわれる「かたまり」、「硬結」、あるいはからだの一部分が肥(ふと)ってきたり、むくんできたりも含む表現である。
*「陰氣(いんき)盛(さか)ん」な状態でもっともわかりやすい状態といえば、インフルエンザに罹患した状態だろうか。ものすごく寒気がして、からだが痛くなり、大小便が出なくなる。「陰脈(いんみゃく)、利(り)せず」というのは、陰の経脈が利(り)せない場合は、というのが直接的な意味であるが、ここではからだの陰の部分が利(り)せずということも重なって表現されていよう。陰の脈あるいは陰の気が通理(つうり)しないとなると、まず大小便が出なくなる。そして通理(つうり)しないことによって、痛みが起こる。痛みが起こって大小便が出ないのが「陰脈(いんみゃく)、利(り)せず」ということである。中国医学は、常に目に見えない部分の理屈と、所見とをごちゃごちゃにして述べるので、具体性をもって解釈しないと、やはりまずいと思う。

○28 陰氣大盛。 29 則陽氣不能榮也。 30 故曰關。
28 陰氣(いんき)大(はなは)だ盛(さか)んなれば、 29 則(すなわ)ち陽氣(ようき)、榮(えい)すること能(あた)わず、 30 故に關(かん)と曰(い)う。

(解説)
*28節の「陰氣(いんき)大(はなは)だ盛(さか)ん」というのは陰実の最たる状態である。
*29節の「陽氣(ようき)、榮(えい)すること能(あた)わず」の「榮(えい)する」とは栄養する、養うということであり、ここではそれが出来なくて陽虚の状態と言える。
*陰実陽虚(いんじつようきょ)の状態は「關(かん)」という状態である。これは「陰ばかりの状態」であり、命に係わるものである。

*『霊枢』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜、午前10時から12時まで大阪府鍼灸師会館3階です。勉強会のご案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は12月10日(日) 『四時氣第十九』を学びます。


(霊枢のテキストは現在2冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)


(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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