公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

報告霊枢勉強会報告 令和四年九月

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和四年(2022年) 9月11日(日)第18回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員20名(うちWeb13名) 一般17名(うちWeb7名) 学生6名(うちWeb5名)
*9月度は会場18名、ネット配信での受講が25名でした。

○『黄帝内經靈樞』終始第九

*『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』上冊185頁の提要(ていよう)を見て行きたいと思う。提要というのは、この篇(終始篇あるいは終始第九)について、どのようにまとめたのかを記したものである。

本篇で主に説明、紹介されていることについて:
① 鍼の治療には蔵府(ぞうふ)、陰陽(いんよう)、経脈や気血の運行の認識が必要である。それが前提になって補瀉(ほしゃ)の治法というものがある。
② 鍼の効果の上において氣(き)を得(う)ること、それが非常に重要である。
③ 経脈を考えた上で取穴すること、浅い深いという問題、鍼の穴を閉じること、そういうことも大事である。上の病を下で取り、下の病を上で取るという事も重要である。
④ 針の刺し方の十二の禁忌(きんき)、経脈の気が絶えた時どのような危険な症状が起こるのか。




○『黄帝内經靈樞』終始第九・第一章(一部を抜粋)
○26 終始者。 27 經脈爲紀。

26 終始(しゅうし)は、 27 經脈(けいみゃく)を紀(き)と爲(な)す。

(解説)
*張介賓(ちょうかいひん)という人の注
「天道陰陽には、十二辰次(じゅうにしんじ: 十二支のこと)あり。これを紀(き)となす。人身の血氣(けっき)に十二經脈あり。これが紀をなす。循環して端(はし)なし。終り、また始まる。ゆえに終始という」

*ここで彼が言っているのは、このようなことであろう。
「天道陰陽というのは、大きくは年月あるいは時間というものである。それがひとの中にも対応している。ひとの經脈も天地の陰陽と同じように、循環してとどまる事はない。ゆえに終始という」

【 張介賓は十二支と十二經脈は結びついていると考えている。十二支とは何か、それは天地に循環性があるということを表している。十二支は子(ね)、丑(うし)、寅(とら)というふうに、ずっと分けていくものである。自然には秩序があり、それは循環するという。それを十二支であらわす。大きくは年月あるいは時間であり、それはひとにも対応していると考えている 】



○28 持其脈口人迎。 29 以知陰陽有餘不足。 30 平與不平。 31 天道畢矣。

28 其(そ)の脈口(みゃっこう)人迎(じんげい)を持ちて、 29~30 以(もっ)て陰陽(いんよう)の有餘(ゆうよ)不足(ふそく)、平(へい)と不平とを知るときは、 31 天道(てんどう)畢(お)わる。

(解説)
*ここで前提になっている考え方はこのようなものだ。
經脈(けいみゃく)というのは、11本とか12本とか考えられていて、まず始めに流注が考えられた。どこから、どういうふうに巡っているかが考えられたが、始めの頃は求心性を持つもの、そして後の時代には循環性を持つものと考えられるようになった。その一方、流注を診なくても病気の經脈を選ぶことが出来る、そんな方法が考えられた。古代における、その典型的なものがここの文章にある人迎(じんげい)脈口(みゃくこう)診であった。人迎というからだの部位で陽を代表させ、脈口という部位で陰を代表させた。からだの中で人迎と脈口を選んで、その部位の脈の太さと強さの対比を倍数で表す。そうして区分して、どこの經脈(けいみゃく)が病気かを診る、そうした方法を取った。

*わたしは、經脈(けいみゃく)を選ぶための脈診は、この古い方法の人迎脈口診か、もしくは新しく日本人が発明した六部定位診(ろくぶじょういしん)しか無いのだろうと思っている。



○32 所謂平人者不病。 33 不病者。 34 脈口人迎。 35 應四時也。 36 上下相應而俱往來也。 
37 六經之脈。 38 不結動也。 39 本末之寒温之相守司也。 40 形肉血氣。 41 必相稱也。 42 是謂平人。

32 所謂(いわゆ)る平人(へいじん)は病まず。 33 病まざる者は、 34 脈口(みゃっこう)人迎(じんげい)、 35 四時(しじ)に應(おう)じ、 36 上下(じょうげ)相(あ)い應(おう)じて俱(とも)に往來(おうらい)す。
37 六經(ろっけい)の脈、 38 結動(けつどう)せざるなり。 39 本末(ほんまつ)の寒温(かんおん)の相(あ)い守り司(つかさど)るなり。 40 形肉血氣(けいにくけっき)、 41 必ず相(あ)い稱(かな)うなり。 42 是(これ)を平人(へいじん)と謂(い)う。
(解説)
*ここで、陰陽の調和というものが「平人(へいじん)」につながると言う。平人というものは病気をしないものである。

*脈口(みやっこう)の脈は「陰」なので秋や冬になると盛んになる。人迎(じんげい)の脈は「陽」なので春や夏、あるいは夏から秋の季節は盛んになる。人迎と脈口の脈の大きさというものは季節に関係する。これが「35 四時(しじ)に應(おう)じ」ということである。

*「36 上下(じょうげ)相(あ)い應(おう)じて俱(とも)に往來(おうらい)す」
「上」は(総頸動脈)の「人迎」、「下」は前腕の(橈骨動脈)「脈口(みゃっこう)」の脈拍である。この二つが往來(おうらい)する、すなわち常に「行ったり来たり」動いているのである。

*「37 六經(ろっけい)の脈、 38 結動(けつどう)せざるなり」
「六經の脈」は三陰三陽の経脈のこと。「結動せざるなり」の中で「結動」というのは、ある種の結滞を指す。ここでは、「 三陰三陽の脈は結滞したり詰まることはなく動き続けるものである 」と言っている。

*「39 本末の寒温(かんおん)の相(あ)い守り司(つかさど)るなり」
人迎と脈口、たがいの脈が強くなったり弱くなったりすることによって「寒」や「温」、「温かい時期」と「寒い時期」あるいは「春夏」と「秋冬」の寒温に対応したかたちで動いていくのだと言う。

*「40 形肉血氣(けいにくけっき)、 41 必ず相(あ)い稱(かな)うなり」
「形肉血氣」は普通「形氣」という。からだの外側で目に触れるものを「形肉(けいにく)」、目に触れないからだの内側を「血氣(けっき)」という。「相(あ)い稱(かな)うなり」は対応していくものだ、ということである。

*「42 是(これ)を平人(へいじん)と謂(い)う」
「平人」というのは、ここの規定で言えば人迎と脈口の脈が季節と調和し、過剰なアンバランスもなく動いていくこと、これが平人だと言う。後には『素問』「平人氣象論」の「平人」の概念というのがある。ここでの「平人」とは春夏秋冬で胃の氣(き)というものが充分にあって、季節の脈が露骨に表にあらわれて来ないものを指す。そのように「平人」の規定というものはいくつもある。



(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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