公益社団法人 大阪府鍼灸師会

研修会&講座のお知らせ

報告令和6年度2月度学術講習会


【日時】令和6年2月11日(日) 13:30~16:45
・学術講習会(ハイブリッド開催・アーカイブあり)
 ①「大阪府における災害リスクと災害への備え」
  講師:手柴 友隆 先生(大阪府 危機管理室 防災企画課 地域支援グループ)



「いつ起こるかわからない自然災害や危機事象に備え、発災時に府民の生命、財産等を守るのが府の使命です」 と日々、危機管理・防災に取り組んでおられる大阪府の危機管理室 防災企画課の手柴友隆氏にご講演いただきました。ご講演内容を要約して以下に記します。

1.大阪府における地震・津波のリスクについて
大阪府内で想定される地震の発生確率(30年確率)
直下型地震 上町断層帯 2~3%
      生駒断層帯 ほぼ0~0.2%
      有馬高槻断層帯 ほぼ0~0.04%
      中央構造線断層帯 0.008~0.3%
(根来区間)
海溝型地震 南海トラフ地震 70~80% 府域では5強から6強の震度を想定
 *南海トラフではおよそ100~150年間隔で大きな地震が起きており、1944年東南海地震(M7.9)、1946年南海地震(M8.0)から現在約80年の空白域があり、1854年安政南海地震(M8.4)・安政東海地震(M8.4)からは約170年の空白域があり、南海トラフ地震が今後30年以内に70~80%、今後40年では90%程度の確率で発生すると予想されています。

大阪府の津波浸水想定区域は、地震により堤防が破壊した場合、沿岸部から大阪の中心部まで及ぶとされています。
 浸水面積:約11,000ha(府の面積の約5.8% *府の面積:約190,500ha)
地震発生後、約60分~120分で1mを超える津波が大阪府域に到達する、小さい津波はもっと早く到達する恐れがあります。
南海トラフ巨大地震による被害想定(人的被害)[平成25年10月大阪府公表]は、早期避難率が低い場合、死者数133,891人(大阪府推計)であり、そのうち津波による被害が132,967人と津波による死者が大多数を占めることになります。避難が迅速な場合は、死者数8,806人となり、そのうち津波による死者数は7,882人と推計されています。

全国地震動予測地図より…今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率
 大阪市役所付近 2020年版:30%


2.大阪府における風水害のリスクについて
大阪の都市部は、南北を淀川・大和川、東西を大阪湾・生駒山に囲まれた低平地で、非常に水はけが悪く、水害を受けやすい地形となっています。
大阪府の高潮浸水想定区域は想定しうる最大規模で沿岸部から都市部となり、浸水面積:約21,000ha(府の面積の約11% *府の面積:約190,500ha)と想定されます。

<対策>
・老朽化が進んでいる三大水門(安治川水門・尻無川水門・木津川水門)を高潮、南海トラフ巨大地震による津波に対応できる水門として更新を行うこととし、現在の水門付近に新たな水門の建設を計画。
・三大水門を基幹施設とする第一線防潮ライン(水門より海側)を形成し、高潮時には水門を閉鎖して高潮の遡上防御を図っている。河川から流下してくる雨水については毛馬排水機場にて淀川に排出。
・防潮堤の基礎部にある液状化層を固化して変位・沈下をおさえる液状化対策工などの耐震、液状化対策を実施。
・津波を最前線で直接防御する第一線防潮ラインの耐震(液状化)対策を平成30年度に完成。
・河川幅を拡げたり、河川底を深くしたりして河道断面を大きくして水位を下げ、洪水氾濫を防ぐ。
・治水緑地や流域調節池などの貯留施設、地下河川等の放流施設などの整備を推進して豪雨対策を実施。
・砂防堰堤を建設し、土石流が起こっても堰堤で土砂を受け止め下流の人家等を守る。
・がけ全体にコンクリート・モルタルを吹き付けてがけの風化や浸食、崩落を防止。など

3.災害への備えについて
大阪府や国で浸水想定区域図等を作成している。
洪水浸水想定区域図 高潮浸水想定区域図 土砂災害警戒区域
→市町村で避難所等を検討しハザードマップを作成
ハザードマップ:災害に遭う地域を予測した地図
確認する方法例…ハザードマップポータルサイト:住所から検索できる
おおさか防災ネット:市町村サイトに簡単にアクセスできる
→家族で自宅や学校、職場などの災害リスクを確認→避難行動につなげる
ハザードマップをしっかり確認することで、事前に浸水リスクなどを知り、早く逃げることが大切

市区町村が発令する避難情報(警戒レベル)
警戒レベル3…『危険な場所から高齢者等は避難』
警戒レベル4…『危険な場所から全員避難』…避難を完了しているのが望ましい
警戒レベル5…『緊急安全確保』命の危険 直ちに安全確保

外出中の大規模地震発生時は施設内に待機しましょう。
むやみな移動で道路をふさぐと緊急車両が通れず人命救助の妨げになったり、落下物や集団転倒など二次災害の危険性があります。

災害への備えとして身の回りを確認・整理・固定を行う。
家庭での備蓄…最低3日分。できれば1週間分。
非常時の持ち出し品…飲料水、携帯食、懐中電灯、モバイルバッテリー、マスク、体温計など これだけは持っていたい、という最低限の備え。

【皆様へのお願い】
災害時には、自助・共助による対応が極めて重要となります。
災害をどこか遠くで起きている「他人ごと」として捉えるのではなく、「私たち」の大事な命に関わることとして捉える必要があります。
平時から「私たち」が、災害はどこでも起こりうる身の回りにあるものとして捉えるとともに、防災教育の地道な取組みを通じ、防災を当たり前と感じて生活に取り込む防災の日常化を進め、「災害文化」を醸成することが大切であると考えています。

4.大阪府鍼灸師会と大阪府の協定について
平成30年8月30日に締結された『災害時の避難所における人的支援に関する協定書』に基づき、大阪府は災害時において災害支援活動に必要があると認めた場合は大阪府鍼灸師会に協力要請をするものとし、協力要請を受けた場合は、可能な範囲で速やかに災害支援班を編成、派遣し、大阪府が指示する場所において災害支援活動を実施するものとする。その支援活動の内容は、
(1) 避難所における鍼・灸等の施術及び療養上の相談
(2) 傷病者に対する応急救護に関する衛生材料等の提供
大阪府で大規模災害が発生した場合は、協力を要請する可能性があります。
その際には、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

被害軽減のための「自助」「共助」「公助」の連携の中にわたし達鍼灸師の活動も入っています。その意識をもって「自らの命は自らが守る」「互いに助け合う」ことの心得とともに普段から備えることの大切さを教えられた、とても貴重なご講演でした。
研修委員 田口まゆみ


・学術講習会(ハイブリッド開催・アーカイブあり)
 ②「お灸の温度と熱量(ジュール)の関係と温灸器の活用法」~お灸の見える化のお話し~
  講師:今里 秀俊 先生(株式会社チュウオー 代表取締役社長)


今期最後となる第5回学術研修会は、理学療法機器メーカーの立場から見た鍼灸でもとくに灸に特化した治療器を用い、それを機械で測定し温度波形がもたらす効果を目で見えるカタチのなる講義であった。
今里社長の軽快な喋りで、機械的な話でも楽しく聞けました。思い返せば私も20年前にバンシンを手にした覚えがある。2008年に初代「バンシン」が発売され、その時の売りは、

・火を使わず、煙を出さず、匂いも出さない
・誰でも、どこでも、簡単に、一定の熱量を出せる
・どこでも手に入れることのできる乾電池を使って現代にお灸を再現・復活させる

という画期的な言葉に惹かれ、2本も買ってしまいました。


燔鍼とは、「古代九鍼の一つである大鍼を火で焼いて熱したもの」であり、本来、鍼を火にあぶってそのまま皮膚に刺鍼する方法である。目的としては、膿を出すために用いる治療法である。それがなんと、火を使わない灸、いわゆる温灸器に大変身し、火を使わず煙も出ず、安定した灸熱を刺激できるという、私自身、ひねり灸は得意でなかったのと、火傷をさせないとくれば買わずにはいられなかった。


その7年後、さらに進化して一灸が発売された。バンシンのプローブは、ほぼ点(直径5mmほど)で、正直熱いというより痛かった。しかし一灸はプローブが直径1㎝くらいで刺激されると確かに熱いと感じた。痛いだと侵害刺激であるが、熱いと感じたということは温熱受容器が反応した、つまりお灸効果があるの思い、調子に乗って3台買ってしまいました。

今里社長の講義は、その裏付けとなる科学的データで説明していただき、温灸器がいかに安全かを理解することができた。それは、もぐさを科学する「MOXATH」というもぐさ燃焼解析システムを用いることで証明された。MOXATHは、「その熱量と刺激量をグラフで可視化します。今まで感覚でやっていたことを、目に見える形でデータ化して技術の比較をすることができます。」



後半は、それを用い、参加された先生方に直接もぐさをひねっていただき、その温度を解析した。これは文章では伝わりにくいので、興味のある先生方は学会や全国大会などの業者展示場に足を運び体験してほしい。またはチュウオーに問い合わせしていただければ、快く社長は対応していただけると思います。

最後にまとめとなりますが、

1.温度変化が遅いと熱いと感じない(皮膚が順応する)⇒低温やけどの危険性
2.温度変化が少ないと熱いと感じない(低温の台座灸)⇒有効熱量が低いと壮数が必要
3.感受性異常を起こしている皮膚(ツボ)は温度変化 を感じにくい⇒取穴が正確なら透熱灸は熱くない
4.人体は温まりにくく、冷めやすい⇒お灸したから温まるわけではない
5.神経伝達、免疫応答、TRPチャネルなど体の仕組みを 応用しよう⇒治療効果は温度と有効熱量によって違う

以上、次年度の学術講習会にもぜひご期待ください。
研修会委員長  清藤 直人

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