公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告『黄帝内經靈樞』五癃津液別(ごりゅうしんえきべつ)第三十六第二章NEW

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和七年(2025年) 4月13日(日) 第49回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:一般 10名, 会員(準会員,日鍼会,全日学会員含む)14名
4月度は会場 15名, web 9名でした。

○『黄帝内經靈樞』五癃津液別(ごりゅうしんえきべつ)第三十六 第二章(一部を抜粋)
○01 黄帝問于歧伯曰。  02 水穀入于口。  03 輪于腸胃。  04 其液別爲五。

01 黄帝(こうてい)、 歧伯(きはく)に問うて曰(いわ)く、  02 水穀(すいこく)、 口(くち)に入(い)りて、  03 腸胃(ちょうい)に輸(ゆ)す。  04 其(そ)の液(えき)、 別れて五(いつ)つと爲(な)る。
(解説)
*黄帝(こうてい)が歧伯(きはく)という人に問うた。 水穀(すいこく)、つまり食物が口に入って腸胃(ちょうい)に運ばれる。 腸胃(ちょうい)というのは口から肛門までの間、おなかの部分の全体を言う。 腸と胃という言葉は現代医学の言葉として使われているので、ここに出てくる「腸胃(ちょうい)」とどうしても混同されてしまう。 ここでの「腸胃(ちょうい)」というのは、あくまでも口よりも下、肛門よりも上の部分のことを示している。

*03節の「輸(ゆ)」は、輸出、輸入の「輸」である。 運ばれるという意味がある。 

*水穀(すいこく)から、液が出て来る。 それは五つに分かれる。 

*液(えき)というのは「津液(しんえき)」をすべて称して、「液」と言っているのであろう。 「津液」は五つに分かれるということを言っている。


○05 天寒衣薄。  06 則爲溺與氣。

05 天(てん)寒く衣(ころも)薄ければ、  06 則(すなわ)ち溺(にょう)と氣(き)とを爲(な)す。
(解説)
*寒い日で、着ているものも薄いものを着ていると、溺(にょう)と氣(き)とをなす。 ここで「溺」は「にょう」と読む。「溺(でき)」ではない。 「溺(でき)」だと水に溺(おぼ)れてしまうことになる。

*馬玄臺(ばげんだい、馬蒔も同一人) はこのように言う。
「 天(てん)寒ければ、則(すなわ)ち腠理(そうり)閉じ、  内(うち)の氣(き)と濕(しつ)俱(とも)に行かず。 (氣と水湿というものが動かない状態になる。) 

其(そ)の水(みず)下りて膀胱(ぼうこう)に留(とど)まる。 ( ここで「水」とは「水濕(すいしつ)」のことである。 ) 
則(すなわ)ち前(まえ)の溺(にょう)と後ろの氣(き)を爲(な)す。 (*「後の氣」というのが難解な、しかし何も説明していないなと感じさせるところではある。) 」


*『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』上冊の532頁にはこのように書かれている。
「“與氣”: 《傷寒論》成注卷五引無。 」 
【 『傷寒論』の成(せい)という人の注、卷(けん)の五には、「與氣」の二字はない。 】

*この本では「與氣」という文字はもともと無かったのではないかと、何となく匂わせているように思える。


*郭靄春(かくあいしゅん)氏も『傷寒論(しょうかんろん)』の同じ箇所を同じように指摘している。 しかし、氏は「與氣」という二文字はあるべきだと言う。 

寒い日のひとのからだというものは、「氣(き)」というものをめぐらせて、そのため水濕(すいしつ)が多くなる。 寒い日というのは、人のからだの中で、その寒さに対応するため熱を生じるのである。 「氣(き)」というものをめぐらして、そのために水濕(すいしつ)がより多くなる。 そして小便がたくさん溜まるようになる。 

*郭靄春(かくあいしゅん)氏は、汗や溺(にょう)も含めて津液(しんえき)というものは五つに分かれると言っている。 そのうちの一つのもの、寒さによってあらわれた氣(き)というもの、それが水濕(すいしつ)を多くさせるのだと言う。 外が寒いとからだの中に熱を生じて、その寒さに対抗しようとする。 からだの中に熱があると水液がめぐる。 そうすると小便がたまるというふうなことだと思う。 ただし「與氣」という二文字は問題があるように思う。

*周海平(しゅうかいへい)という人は「與氣」は衍文(えんぶん,誤って書き入れられた文)なので、この二字は取り去るのが良いという。 郭靄春(かくあいしゅん)氏とは異なった見解をしている。

*『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』の上冊532頁(ページ)にはこのような記述がある。
「“溺(niao)與氣”: 溺,同尿。【 溺(にょう)は尿に同じ。 】 

*張保春(ちょうほしゅん)という人はこのように言う。
「溺與氣: “溺” 同 “尿”。 張介賓(ちょうかいひん): “此津液之爲溺氣也。 腠理閉密則氣不外泄, 故氣化爲水。 水必就下, 故留于膀胱。 然水即氣也。 水聚則氣生, 氣化則水注, 故爲溺與氣。”」 

*上の文章を読むとこのようになる。

【 此(こ)れ津液(しんえき)の溺氣(にょうき)と為(な)るなり。 腠理(そうり)、閉密(へいみつ)なれば則(すなわ)ち氣(き)は外泄(がいせつ)せず。 故(ゆえ)に氣(き)は、化(か)して水(みず)と為(な)る。 (*外にもれない気というものは、水になる。 ) 水(すい)、必ず、すなわち下(くだ)る。 故(ゆえ)に膀胱(ぼうこう)に留(とど)まり、 然(しか)り、水(すい)は即(すなわ)ち氣(き)なり。 水(みず)聚(あつ)まれば、則(すなわ)ち氣(き)生ず。 氣(き)、化(か)せば則(すなわ)ち水(みず)注(そそ)ぐ。 故(ゆえ)に溺(にょう)の氣(き)を爲(な)す。 】

*この注は理屈のための理屈に思えてしまう。 むしろ郭靄春(かくあいしゅん)氏の注のほうがわかりやすいと思う。



○07 天熱衣厚。  08 則爲汗。

天(てん)熱く衣(ころも)厚ければ、  08 則(すなわ)ち汗(あせ)を爲(な)す。
(解説)
*『甲乙經(こういつきょう)』という本では、07節の「熱」の字は「暑」の字となっている。

*馬玄臺(ばげんだい)という人は、このような注を入れている。
「天暑衣厚、 則人之腠理開、故汗出。 」

【 天(てん)暑く、 衣(ころも)厚ければ、  則(すなわ)ち人(ひと)の腠理(そうり)開くが故(ゆえ)に汗(あせ)出(いずる)。 】


*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は 6月8日(日)、『霊枢』「血絡論(けつらくろん) 第三十九」 です。 

八月の「霊枢勉強会」は特別講義となります。 つきましては 6月7日(土)締切りで広く演題を募集いたします。 その案から一つを選んで篠原先生にご講義いただくリクエスト形式といたします。

 大阪府鍼灸師会のホームページにある、お問い合わせフォームに件名「八月特別講義 演題の件」と書いて、 あなたがリクエストしたい具体的な「演題(案)」とその概要をお知らせください。  6月8日(日)に霊枢勉強会に参加される方は、 その場に案をお持ち下さっても構いません。 学びたいことあるといいな。 演題(案)の例、 こんな感じでしょうか。

(例) 演題(案) 「氣(き)の医学について」 中国医学の「氣」のイメージ,藏の氣などについて


(霊枢のテキスト〈日本内経医学会 発行,明刊無名氏本〉 は現在1冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)

(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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