公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告霊枢勉強会報告 『黄帝内經靈樞』 熱病(ねつびょう)第二十三・第十二章NEW

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和六年(2024年)4月14日(日)第37回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員21名(うちWeb13名) 一般20名(うちWeb9名) 学生2名(うちWeb2名)
*4月度は会場19名、ネット配信での受講が24名でした。

○『黄帝内經靈樞』 熱病(ねつびょう)第二十三・第十二章
*この章から後は、熱病では無くて一つ一つの病に関する病症の記述になる。ただ、寒熱が関係する病症がこの篇に入れられたのだと思う。

○01 氣滿きょう中喘息。(**きょうの字は「匈」の下に「月」) 02 取足太陰。 03 大指之端。 04 去爪甲如薤葉。

01 氣(き)、きょう中(きょうちゅう)に滿(み)ちて喘息するは、(**きょうの字は「匈」の下に「月」)  02~04 足の大陰(たいいん)、大指(たいし)の端(はし)、爪甲(そうこう)を去(さ)ること薤葉(かいよう)如(ばか)りを取る。
(解説)
*04節の「薤葉(かいよう)」とは、にらの葉のこと。

*爪甲(そうこう)を去ること薤葉(かいよう)ばかりとは、爪甲(そうこう)から、わずかに離れた部分を指す。

*01節の「きょう中(きょうちゅう)に滿(み)ちて喘息する」は、「はあ、はあ」と息を喘がせる喘息の状態を指し、そんな症状がある場合は足の大陰(たいいん)の経脈にある隠白(いんぱく)という穴を使うのだと言う。


○05 寒則留之。 06 熱則疾之。 07 氣下乃止。

05 寒(かん)すれば則(すなわ)ち之(これ)を留(とど)め、 06 熱(ねっ)すれば則(すなわ)ち之(これ)を疾(すみ)やかにす。 07 氣(き)下(さが)りて乃(すなわ)ち止(とど)む。

(解説)
*ここでは、からだの状態の寒熱を区別して、寒であれば鍼を置鍼(ちしん)し、熱であれば鍼を刺した後に、すぐに抜くのだと言う。

*07節は、気が下って喘息が途絶えれば、それで鍼をやめると言っている。


○『黄帝内經靈樞』 熱病 第二十三・第十三章

○01 心疝暴痛。 02 取足太陰厥陰。 03 盡刺去其血絡。

01 心疝(しんせん)、暴(にわ)かに痛むは、 02 足の大陰(たいいん)厥陰(けついん)を取り、 03 盡(ことごと)く刺して其(そ)の血絡(けつらく)を去る。

(解説)
*02節では、経脈の「足の大陰(たいいん)」と「足の厥陰(けっちん)」を取ると言う。
*「足の大陰」と「足の厥陰」は相剋(そうこく)の関係にあるので、現在はこのような経脈の選びかたはしない。

**相剋: 足の大陰脾経は五行の、足の厥陰肝経は五行の(木は土を尅す)


○『黄帝内經靈樞』 熱病 第二十三・第十四章

○01 喉痺。 02 舌卷。 03 口中乾。 04 煩心心痛。 05 臂内廉痛。 06 不可及頭。 07 取手小指次指爪甲下。 08 去端如韭葉。

01 喉痺(こうひ)、 02 舌(した)卷(ま)き、 03 口中(こうちゅう)乾き、 04 煩心(はんしん)し、心痛(しんつう)し、 05 臂(ひ)の内廉(ないれん)痛みて、 06 頭(かしら)に及ぶ可(べ)からざるは、 07~08 手(て)の小指(しょうし)の次指(じし)の爪甲(そうこう)の下(もと)、端(はし)を去ること韭葉(きゅうよう)如(ばか)りを取る。

(解説)
*この章を要約するとこのようになる。
のどが痺れ、痛んで、舌が巻き上がって喋れない状態である。口の中が乾いて、胸苦しい状態で、みぞおちの辺りが痛む。臂(ひ)の内廉(ないれん)、前腕が痛んで、それを頭のほうに近づけることが出来ないということであるから、手を挙げられないということなのだろう。そういう状態の場合には、手の小指の次指(第四指)、爪甲(そうこう)を去ること韭葉(きゅうよう)ばかりを取れと言っている。

*07節の「手の小指の次指の爪甲の下(もと)」については、つぼのこと、あるいは経絡のことをどれほど考えているのか、もう少し解析の必要がある。


○『黄帝内經靈樞』 熱病 第二十三・第十五章

○01 目中赤痛。 02 從内眥始。 03 取之陰蹻(いんきょう)。

01 目中(もくちゅう)、赤く痛むこと、 02 内眥(ないし)より始まるは、 03 之れを陰蹻(いんきょう)に取る。

(解説)
*内眥(ないし)、すなわち目の内側のまなじりが赤く痛んでくる場合には陰蹻(いんきょう)というところを使う、と言っている。

*「陰蹻(いんきょう)」は、照海(しょうかい)という穴の別名である。ここでは照海(しょうかい)という穴を使うのだ、と言っている。


○『黄帝内經靈樞』 熱病 第二十三・第十六章

○01 風痙。 02 身反折。 03 先取足太陽。 04 及膕中。 05 及血絡出血。 06 中有寒。 07 取三里。

01 風痙(ふうけい)は、 02 身(み)反折(はんせつ)す。 03~05 先ず足(あし)の太陽(たいよう)、及び膕中(かくちゅう)、及び血絡(けつらく)を取りて血(ち)を出(いだ)す。 06 中(なか)に寒(かん)有るは、 07 三里(さんり)を取る。

(解説)
*01節の「風痙(ふうけい)」は風邪による痙攣(けいれん)を言う。

*02節の「身反折す」とは、からだをそらせている状態を言う。

*06節の「中に寒有る」という状態をどのように診るのかは、ここでは注解も含めて書いていない。


○『黄帝内經靈樞』 熱病 第二十三・第十七章

○01 癃。 02 取之陰蹻。 03 及三毛上。 04 及血絡出血。

01 癃(りゅう)は、 02~03 之(これ)を陰蹻(いんきょう)、及び三毛(さんもう)の上(うえ)に取る。 04 及び血絡(けつらく)より血(ち)を出(いだ)す。

(解説)
*01節の「癃(りゅう)」というのは、小便が出ない状態を指す。後の時代には「淋(りん)」という名前で、その状態を示した。

*02節の「陰蹻(いんきょう)」は照海(しょうかい)穴のことである。
**照海(しょうかい): 部位 足内側,内果尖の下方1寸,内果下方の陥凹部 (『新版 経絡経穴概論・拡大版』 編者 日本理療科教員連盟・社団法人東洋療法学校協会, 発行 (株)医道の日本社,2009年4月20日 第1版232ページによる)

*03節「三毛(さんもう)」は足の厥陰肝経(けついんかんけい)という経脈の「大敦(だいとん)」という穴を言う。「三毛」という時には必ず「大敦(だいとん)」の穴のことを指す。

*ここでは、肝経(かんけい)や腎経(じんけい)を使うと言っている。

*04節「血絡(けつらく)より血を出(いだ)す」について
この頃の治療は出血させるという治療法が当然としてあった。出血させるものと灸をすることが主であった。『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』という本の中では灸をするよりも、もっぱら血を出(いだ)すということが多い。


*『霊枢』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会館3階です。勉強会の案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は2024年 6月9日(日)「病本(びょうほん)第二十五」です。『霊枢(れいすう)』は普通の漢字ソフトには無い漢字もあります。でもね、昔の人はどんなことを思っていたのか知れる良い機会だと思います。続き物でもないので、どの篇でも興味に応じて受講頂ければと思います。

(霊枢のテキストは現在2冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)


(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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