公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

報告霊枢勉強会報告 『黄帝内經靈樞』 骨度(こつど)第十四

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和五年(2023年)7月9日(日)第28回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員33名(うちWeb23名) 一般18名(うちWeb8名) 学生21名(うちWeb20名)
*7月度は会場21名、ネット配信での受講が51名でした。

○『黄帝内經靈樞』 骨度(こつど)第十四

○はじめに

*『靈樞(れいすう)』という本の「骨度(こつど)第十四」から「營衞生會(えいえせいかい)第十八」までの篇は一つのまとまりと考えて良いだろう。この篇「骨度第十四」は、そのまとまりの中の序説的なものだと、わたしは見ている。

*本篇のように「黄帝(こうてい)」という人の問いに「伯高(はくこう)」という人が答える文章は『靈樞(れいすう)』にのみ見える。(**『靈樞』の中に10篇ある)

*黄帝(こうてい)と伯高(はくこう)という人の問答の十篇のうち 「骨度(こつど) 第十四」、 「腸胃(ちょうい) 第三十一」、 「平人絶穀(へいじんぜっこく) 第三十二」 の内容は一致性が高い。しかし、その他の諸篇の相互関係は今後検討してみる必要があろうと思う。文中で誰と誰とが会話をしているかということに意味はないのだという論もある。しかしわたしは必ずしもそうは思わない。誰と誰が問答をしているか、会話の形式に着目されたのは山田慶兒(やまだ けいじ)氏であるが、わたしも意味なく対話者を記述しているのではないと思う。
(**岩波新書 『中国医学はいかにつくられたか』(新赤版)599,山田慶兒(やまだ けいじ)著,岩波書店発行が参考になると思います。松本)


*「骨度第十四」この篇は、黄帝(こうてい)と伯高(はくこう)との問答の形式からも、またその度量衡(どりょうこう)的な内容、長さを計測していることからも 「腸胃(ちょうい)第三十一」、 「平人絶穀(へいじんぜっこく)第三十二」 という篇と関係が深いと考えられる。この第三十一篇、第三十二篇も度量衡的な内容である。度量衡的な内容が書かれているものは『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』の中ではとても珍しく、ある意味では特殊なものと言える。

*『靈樞(れいすう)』の篇の度量衡的な内容を取り上げて、『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』は解剖学と生理学を土台にして論じられているという論説を立てる人がいる。しかしわたしはそのように思わない。『靈樞(れいすう)』第十四篇、第三十一篇や第三十二篇のように現在の解剖学にも通じるような内容のものというのは『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』の中でも特別なものである。これらの篇の位置づけは、なかなか難解なものだと思う。これらの篇の内容を基礎として、その上に築かれていくというほどの簡単なものではない。それを頭に入れておく必要はあろう。

*『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』を読む時、『甲乙(こういつ)』や『太素(たいそ)』における扱いを見ることは、とても重要である。『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』を読むというと、すぐに諸家の注、たとえば馬玄臺(ばげんだい)、張介賓(ちょうかいひん)、張志聰(ちょうしそう)や、また日本の江戸考証学派の注などが問題になる。

しかしその前に『鍼灸甲乙經(甲乙【こういつ】)』や『黄帝内經太素(太素【たいそ】)』という『素問(そもん)』と『靈樞(れいすう)』をあわせて改編した書物によってどのように扱われているかを見ることは重要である。『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』を古い時代の人はどのように考えていたかを考える根拠が、そこにはある。

*『甲乙經(こういつきょう)』の卷之二(けんのに)「骨度腸度腸胃所受(こつど・ちょうど・ちょうい・しょじゅ)第七」に「骨度」の文章が収められている。この中には『靈樞(れいすう)』の 「骨度(こつど)第十四」 と 「腸胃(ちょうい)第三十一」 と 「平人絶穀(へいじんぜっこく)第三十二」 という三つの篇の文章が一緒に収められている。これはとてもまとまりが良いと思う。このことは『甲乙經(こういつきょう)』の著された段階において、これらの諸篇が関係を持つものと理解されていたことを示すものと思う。一方『甲乙經(こういつきょう)』では「骨度第十四」の経文は、『靈樞(れいすう)』と異なり 「五十營(ごじゅうえい)第十五」、 「營氣(えいき)第十六」、 「脈度(みゃくど)第十七」、 「營衞生會(えいえせいかい)第十八」 とは別のものとして扱われている。

*『太素(たいそ)』という本は『素問(そもん)』の時代のものであり、『素問(そもん)』や『靈樞(れいすう)』をあわせて改編したものである。その中の「卷(けん)第十三」に「身度(しんど)」という篇を設けて、ここに「經筋(けいきん)」(「經筋第十三」の全文)」、 「骨度(こつど)」(「骨度第十四」の全文)」、 「腸度(ちょうど)」(「腸胃(ちょうい)第三十一」 と「平人絶穀(へいじんぜっこく)第三十二」 の全文)、「脈度(みゃくど)」(「脈度(みゃくど)第十七」全文)を合わせたものを含ませている。しかし、この組み合わせには難解な部分がある。ひとつは「經筋(けいきん)」という、どのように考えようとも經脈(けいみゃく)に関係があるのではと思われるものが含まれていることにある。ここが引っかかる。


*「骨度第十四」、この篇が書かれた目的、すなわち「骨度」は何のために必要であったか。あるいは、骨度と脈度(みゃくど)の関係(本篇冒頭によれば、明らかに骨度は脈度(みゃくど)を定めるために設定されたものである。しかし脈度は兪穴(ゆけつ)の位置ではない)。


*現在、中医学の概論書あるいは日本の鍼灸の教科書等によって中国の医学、あるいは日本の医学を含めた東アジアの医学の概論というものが示されている。ここで「骨度」というものは経穴との関係で論じられている場合が多いように感じる。しかし、それが本当なのかは疑ってみる必要がある。「骨度(こつど)」が出来た当時、それが何のために出来たのかを考えることは必要である。後の時代、経穴学に「骨度」がどのように援用あるいは利用されたかという問題とは別に、これを考えることは必要であろう。

*「いま、骨度(こつど)が経穴学に利用されていて、便利だから、それでいいじゃないか」 ということとは、まったく別の問題がある。「骨度」というものが古くはどのようなものであったかということと、歴史的な過程において「骨度」がどのように使われたかという問題は別のものとして、よく考えなければならないものと思う。中国医学の古い段階のものと、歴史的過程を経てきた中国医学とを同じものとして考えることは宜しくないと思う。


*『霊枢』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜、午前10時から12時まで大阪府鍼灸師会館3階です。勉強会のご案内につきましては本会ホームページをご確認下さい。
次回は9月19日(日) 「五十營 第十五」を歩きます。


(霊枢のテキストは現在2冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)


(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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