公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

報告霊枢勉強会報告 令和四年六月

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和四年(2022年) 6月12日(日)第15回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員25名(うちWeb16名) 一般15名(うちWeb6名) 学生9名(うちWeb8名)
*6月度は会場19名、ネット配信での受講が30名でした。

○『黄帝内經靈樞』官針(かんしん)第七 ・ 第六章

○01 凡(およ)そ刺(し)に五つ有り、 02 以(もっ)て五藏に應(おう)ず。

(解説)
*五蔵(ごぞう)に対する刺法について述べる。




○03 一(いち)に曰(いわ)く、半刺(はんし)。
04 半刺は、 05 淺(あさ)く内(い)れて疾(と)く針(はり)を發(はっ)す。 06 針、肉(にく)を傷(やぶ)ること無(な)かれ。 07 毛(け)を拔(ぬ)く状(かたち)の如(ごと)し、 08 以(もっ)て皮氣(ひき)を取る。 09 此(こ)れ肺の應(おう)なり。
(解説)
*半刺(はんし)は、からだの浅い部分を刺せ、と言う。そして肉の深さまで鍼を進めてはいけないと言う。皮膚の表面で鍼を動かして鍼を出せと言う。
*半刺という名前は一の半分ということを示唆する。ちょっと刺すのだと言う。毛を抜くみたいにと言う。刺すのは浅く浅くということである。




○10 二(に)に曰(いわ)く、豹文刺(ひょうもんし)。 
11 豹文刺は、12 左右前後、之(こ)れに針(はり)し、 13 脈に中(あた)るを故(ゆえ)と爲(な)す。
14 以(もっ)て經絡(けいらく)の血(ち)ある者を取る。 15 此(こ)れ心(しん)の應(おう)なり。
(解説)
*「豹文刺」は、「ひょうぶんし」か「ひょうもんし」か。「ひょうもん」と読んでいる例が多いので、ひとまず「ひょうもんし」と読んでおく。

*左右前後と言うのであるから、経脈の左右前後であろうか。左手、右手というのもあるし経脈の前、後とも考えられようか。

*「脈にあたって、経脈の血あるものを取る」と言うのであるから、出血させないといけないのだろう。

*「心の應なり」は、心(しん)に影響を与えるということである。

*刺法名の「豹文(ひょうもん)」について楊上善(ようじょうぜん)という人は「左右前後の針痏(しんい)、状(かたち)豹文(ひょうもん)の若(ごと)し」、ヒョウの文様のようになっているから、と注を入れている。張介賓(ちょうかいひん)という人は、それを多いという意味だと解釈するが、どうも多いという意味だけでは納得できない。

*13節の「脈に中(あた)るを故(ゆえ)と爲(な)す」の「故」は『呂氏春秋』知度「非晉國之故」の注「故、法(しきたり)」により解釈し「道理」「ことわり」と解した。




○16 三(さん)に曰(いわ)く、關刺(かんし)。 
17 關刺(かんし)は、 18 直(ちょく)に左右、筋を盡(つ)くす上(うえ)を刺して、 19 以(もっ)て筋痺(きんひ)を取る。 20 愼(つつし)みて血(ち)を出(いだ)すこと無(な)かれ。 21 此(こ)れ肝(かん)の應(おう)なり。
(解説)
*18節の「直(ちょく)に左右、筋を盡(つ)くす上(うえ)を刺して」というのはどういうことであろう。「左右」というのは左右の四肢だという説がある。また左右の四肢の関節という説もある。「筋を盡(つ)くす」というのは、関節の部分を指しているという説がある。

**当日配布資料43ページより引用
張介賓曰、「 關、關節也、左右四肢也。 【 關(かん)、關節(かんせつ)なり。左右の四肢なり 】 盡筋、則關節之處也。 【 筋を盡(つく)す、則(すなわ)ち關節(かんせつ)の處(ところ)なり 】 」


*ここでわかることは、一の皮、二の脈、三の筋と、一から二、三に至ってだんだんと鍼の刺す深さが深くなっているということだ。

*20節から21節にかけて「 愼(つつし)みて血(ち)を出(いだ)すこと無(な)かれ。  此(こ)れ肝(かん)の應(おう)なり 」と言っている。これは肝が血に関係しているからということだろう。



○22 或(ある)いは淵刺(えんし)と曰(い)う。 23 一(いち)には豈刺(がいし)と曰(い)う。
(解説)
*淵刺(えんし)は『太素經(たいそきょう)』という本では、「開刺(かいし)」となっている。豈刺(がいし)に関しては色々な考察がある。豈刺(がいし)の豈(がい)の字は「輸」と同じという解釈もある。
淵刺(えんし)も豈刺(がいし)も關刺(かんし)の別名というには、あまりふさわしくないように感じる。




○24 四(し)に曰(いわ)く、合谷刺(ごうこくし)。 
25 合谷刺は、 26 左右(さゆう)鷄足(けいそく)のごとくに、 27 分肉(ぶんにく)の間(かん)に針して、
28 以(もっ)て肌痺(きひ)を取る。 29 此(こ)れ脾(ひ)の應(おう)なり。
(解説)
*「合谷刺(ごうこくし)」の名義について、張介賓(ちょうかいひん)は「三四攅合(さんよんさんごう)し、鷄足(けいそく)の如くなり」と言っている。にわとりの足みたいにいくつもの爪がある状態だというのであろう。彼は個々の文字については解釈していない。その後の注に「邪(じゃ)は肉間(にくかん)に在(あ)って、その氣(き)廣大(こうだい)なれば、合刺(ごうし)に非(あら)ざれば、可(か)ならず」と言う。ここで「合刺(ごうし)」という言葉を使っている。楊上善(ようじょうぜん)という人も「分肉(ぶんにく)の間(かん)の氣を合わせるをもって」と言っており、これを「合刺(ごうし)」の由来だとする。とすると「合谷刺(ごうこくし)」とは「合刺(ごうし)」のことかもしれない。




○30 五(ご)に曰(いわ)く、輸刺(ゆし)。 
31 輸刺は、 32直(ちょく)に入れ直(ちょく)に出(い)だして、33 深く之(これ)を内(い)れて骨(こつ)に至り、 
34 以(もっ)て骨痺(こつひ)を取る。 35 此(こ)れ腎(じん)の應(おう)なり。
(解説)
*「直(ちょく)に入れ直(ちょく)に出(い)だす」というのは「鍼をまっすぐに入れて、まっすぐに出す」ということであろう。「深く之(これ)を内(い)れて骨(こつ)に至り」ということなので、鍼を骨(こつ)に至るまで目いっぱい深く刺し入れると言っているのであろう。

*「輸刺(ゆし)」については、すでに第三章・九變(きゅうへん)に応ずる刺法で述べられているように、本篇のあちこちに出て来る。都合三か所にその言葉が見える。第三章では、背部兪穴などに刺せというものであるのに対して、他の章の「輸刺」は手技手法に関わるものである。

**第三章より「輸刺」の部分を抜粋
03 一(いち)に日(いわ)く、輸刺(ゆし)。 04 輸刺は、 05 諸經(しょけい)滎輸藏腧(けいゆぞうゆ)を刺すなり。



【さらに勉強したい方のために】
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
(https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp)
渋江抽斎 ⇒ 検索 黄帝内経霊枢24巻首1巻で『靈樞講義』のマイクロフィルム画像を見ることが出来ます。

*次回は8月14日(日)10時~12時、大阪府鍼灸師会館で八月恒例の特別講義です。  『蔵府・経脈・兪穴の関連性について』と題して、篠原先生にお話頂きます。夏の一時、お誘いあわせの上、ご参加頂けるとうれしいです。
(霊枢のテキストは現在3冊の在庫があります。1冊1,600円です。受講申し込み時、または当日、受講受付けにてお問い合わせください)

(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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