研修会&講座のお知らせ
令和元年12月8日第5回学術講習会報告[2020/02/01]
令和元年度 第5回学術講習会報告
(令和元年12月8日 会場:履正社医療スポーツ専門学校)
「『灸法の基本十項』の概説と効かせる灸治療」「婦人科疾患と施灸の実際」
医療法人社団健有会 湘南慶育病院 福島 哲也
『深谷灸法』とは、深谷伊三郎氏が、四十有余年の臨床体験の中から構築された灸による治療法である。
深谷灸法は、排他的で一人よがりな考え方を排して、経験の深浅に関係なく広く治験や意見に耳を傾け、殊に、古くから民間に伝わる灸法を大切に取り入れてきた。又、古典・名著と呼ばれる医籍や先賢の諸説を尊奉すると同時に、それらを教条的に盲信することなく、臨床経験を通して確認され認識された灸療をモットーとしている。そして、この灸法は常に新しい施術を開拓し、発展させる普遍性をもった療法である。
深谷灸法の『基本十項』とは、深谷灸法の象徴、深谷灸法の取扱説明書、臨床の心構え、経穴をいかに活かすかから成り立っている。
□基本十項
① 経穴は効くものではなく、効かすものである→深谷灸法の基本姿勢である
② 成書の経穴部位は、方向を示すのみ→体表に現れた反応(硬結・圧痛)を重視する
③ 経穴は移動する→変動穴・生きたツボを使う
④ 名穴を駆使して効果を挙げよ→名家灸選・鍼灸阿是要穴・黄帝明堂灸経を参考にする
⑤ 少穴で効果をあげるべきである→ツボ殺し・寿限無取穴は使わない
⑥ 反応のない穴は効果が少ない(効き目のでないものは出すようにする)
→反応は圧痛・硬結として出る
⑦ そこが悪いからと、そこへすえても効果はない→患部取穴より反応が出る遠隔取穴を使う
⑧ 名穴であっても、ただそれだけに効くのではない→(例)膈兪は胃疾・不眠・喘息・腱鞘炎などに効く
⑨ 灸炷の大小壮数は患者の体質に合わせよ(熱くないところは熱くなるまですえよ)
→刺激量・灸熱の浸透が大事である
⑩ 経穴は手際よく取穴せよ→施術時間の短縮・患者の信頼・臨床経験が必要である
□選穴・取穴~施灸の基本手順は次のようである。
肩背部の押圧擦過(反応探索する)
↓
選穴・取穴(圧痛確認する)
↓
施灸(灸熱緩和・灸熱浸透・反応確認する)
具体的に婦人科疾患の灸治療を「名家灸選」三部作(「名家灸選」、「続名家灸選」、名家灸選三選))から効果のある経穴を数多く紹介して頂き、さらに施灸テクニックを実践して頂いた
深谷灸法の基本は、いかに圧痛・硬結を見つけ、それを施灸により解消することにあると思われる。
(研修委員 中村 隆)