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素問

令和元年9月8日(日)素問勉強会 / 疏五過論篇(そごかろんへん)第七十七2019.11.01

素問勉強会
講師:日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時: 令和元年 9月 8日(日) 
会場: 大阪府鍼灸師会館 3階  出席者: 会員9名  一般15名   学生1名

医道の日本 2019年8月号・9月号 『臨床に活かす古典№87・88 難経その2・その3』のお話より

 
『難経』は、その内容から見ても文章の面から見ても、後漢時代(25~220年)ぐらいに出来たものだと言われている。前漢時代(前206~後8年)の文章は『素問』『霊枢』もそうであるが格調があり、韻文で書かれている。『難経』は散文的で韻文の部分が少なく説明的な文章が多い。
 
後漢時代を過ぎて三国時代(220~280年)になると『難経』の注解書が書かれる。呂広(りょこう)という人が注解したものである。これは、脈の部分には注(ちゅう)が多いが、それ以外の部分には注がないものであった。それから300年ぐらい経った唐時代(618~907年)に『難経』の構成の変更と、全編にわたる注解を楊玄操(よう・げんそう)という人が行った。
 
北宋時代(960~1126年)に宋改(そうかい)という国家事業があり、それまでにあった重要な書物を多数印刷することが行われた。この時に文章の校訂も、その箇所を記した上で行われる。『難経』も、その時に底本となるものができた。そのおかげで、みんなが『難経』を見られるようになった。途端に注解する人が増えた。
 
現在、宋の時代に注解されたものが別の本に転写された形で何種類も残っている。この頃の注解者に丁徳用(てい・とくよう)や虞庶(ぐしょ)が居る。こうして、みんなが注に注を重ねるという形で『難経』の難しそうな部分が段々とわかるようになった。
 
『難経』は脈診の本であり、経脈の本であり、病症の本であり、最後にまとめて選経・選穴・補瀉論がある。それに対して、たとえば「六十九難」や「七十五難」の選経・選穴論の非常に難しい部分に、みんなが注をつける。注はそれぞれ違っているが、注を重ねて行くと段々と内容が深まって、みんなが気が付かなかった所に気がつくようになる。宋から元の時代(宋960~1279年,元1279~1367年)まで『難経』の経文の研究は結構進んだと思う。
 
私の研究では南宋時代頃、800年ぐらい前と推定しているが『王翰林集註(おうかんりんしっちゅう)黄帝八十一難経』(略称『難経集註』)という古い注だけをまとめた本が出る。この本には北宋時代の古い呂広、楊玄操の注も含まれている。
 
元時代(1279~1367年)の終わりごろに滑寿【(かつじゅ)、名は寿、滑伯仁ともいう】という人が『難経本義』(1361年)を著す。この本は非常に重要な本だと思う。
 
 
・中国での『難経』の影響について
中国で『難経』がもてはやされた大きな理由は脈診によると思う。北宋時代に印刷された本に『脈訣(みゃくけつ)』というものがある。『難経』と『脈訣』を一緒に読むということが明の時代から続いた。『難経』は鍼灸の本というよりも、脈診の本として使われていたという事は明かでは無いだろうか。
 
 
 
疏五過論篇(そごかろんへん)第七十七
 
第三章
 
凡そ(およそ)病を診せんと欲せば(ほっせば)、必ず飮食居處(いんしょくきょしょ)を問う。暴(にわか)に樂しみ(たのしみ)暴に苦しみ、始めは樂しみ(たのしみ)後ち(のち)に苦しめる。皆な(みな)精氣(せいき)を傷る(やぶる)。精氣竭絶(せいきけつぜつ)すれば、形體毀沮(けいたいきしょ・けいたいきそ)す。暴(にわか)に怒れば陰を傷り(やぶり)、暴に喜べば陽を傷る。厥氣上行(けっきじょうこう)すれば、脈に滿ち(みち)形(かたち)を去る。愚醫(ぐい)、之れを治すれば、補寫(ほしゃ)を知らず、病情を知らず、精華(せいか)、日に脱して、邪氣(じゃき)乃ち(すなわち)并す(へいす)。此れ(これ)治の二過(ちのにか)なり。
(訳文)
診察する時には、食事と、どんな環境に居るかという事を問いなさい。突然、非常に楽しい事が起こったり、苦しい事が起こったり、以前は楽しかったが後には苦しくなったり、それらは体の中の精気を傷めてしまう。精気が絶えてしまうと、げっそりしたり色艶が悪くなったりして、しだいに痩せてくる。急に激しく怒れば、陰(体の内側)を傷める。急に激しく喜べば陽(体の外側)を傷める。気が上に行くと、気が脈に満ち満ちて、げっそりと体が痩せてくる。下手な医者が治療をしようとしても、補瀉を知らないし、病の状態も知らないので、精気の表れが段々と抜けて行き、そこに邪気がぴったりとくっついてしまう。これが「治の二過」である。
 
 
『素問』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜、午前10時から12時まで大阪府鍼灸師会館3階です。『素問』の森を歩いていたら、自然に『霊枢』の森へ続いていきます。
 
(素問勉強会世話人  東大阪地域 松本政己)
訂正:10月号 Fresh(F-1)下段右側の1行目
(誤り)脈法の肝要なことを書いてあるのだが、結してやさしくない。
(正)                   決してやさしくない。