学ぶ

HOME » 学ぶ » 研修会&講座のお知らせ » 令和元年度 第1回学術講習会報告-2「作業療法の視点で認知症予防・転倒予防を捉える」

研修会&講座のお知らせ

令和元年度 第1回学術講習会報告-2「作業療法の視点で認知症予防・転倒予防を捉える」2019.06.28


 
令和元年度 第1回学術講習会2講目報告
(令和元年5月19日 会場:明治東洋医学院専門学校)
「作業療法の視点で認知症予防・転倒予防を捉える」             
  講師:森ノ宮医療大学 作業療法学科 教授 横井 賀津志 先生             
 
 地域包括ケアの中における多職種連携・協働の重要性は皆さんも周知の事実ですが、お互いの専門職をどれだけ理解しているのか?という問題は非常に大きいのではないだろうか。そこで今回は、認知症予防において重要な役割を担う作業療法士という専門職を理解し、作業療法士が認知症をどう捉え、治療しているかを講演して頂いた。
1.作業療法士って?
まず作業療法士(OT:occupational therapist)とは,心身に障害のある方に対し,その人自身の存在を取り戻すため,治療に作業(occupation)を用いる医療・保健・福祉の専門職です。作業とは,自分にとって切り離すことができなく、その活動が出来なくなったら自分を見失ってしまうと感じ,自分を醸し出す活動のことです。
作業の特徴としては、①時間(いつ)②場所(どこで)③人(だれと)④手順(どのように)と4つの概念が入っている。もちろん作業療法によって手足を動かせるようにしたり、麻痺を回復させることは非常に大事なことではあるが、その人自身を取り戻すことが本来の目的である。
2.認知症に対するアプローチ
 作業療法士が認知症の方へアプローチする場合、中核症状とBPSD(周辺症状)とでは異なる。例えば、中核症状に対してはRO法(Reality Orientation)を用いる。RO法とは、「現実を正しく把握してもらう」ための介入方法で、介護者や作業療法士などの援助者が日常生活のあらゆる機会を利用して、認知症の方が自分のおかれている状況を正しく認識できるように援助するものである。日々の関わりの中で「今日は晴れていますね」「桜の季節ですね」「5月は〇〇祭が始まりますね」など、対象の方の生活背景に合った現実的な会話を取り入れる。認知症の方の現実感覚を取り戻し、見当識障害の改善が期待される。また研究では、軽度AD(アルツハイマー型認知症)患者は、全体の記憶総量は健常人に比べ低下しているものの、情動喚起による記憶の増強効果は健常人と同等であったとの結果が出ている。つまり、いつ・どこで・だれと・どのようには記憶からこぼれてしまうが、その場の雰囲気や味わった感情(うれしい・楽しい・悲しい・寂しいetc)などの形容詞は残るというのである。
また、認知症の症状が出る前の超早期(プレクリニカル)や軽度認知障害(MCI)の状態での様々な認知症予防を実践することは修正可能な状態でもあるという。例えば、歩くことに関しても1日5000歩・早歩きを7.5分というラインで認知症の有病率に差が出るというデータもある。さらに介護が必要となる原因疾患の第4位(女性では第2位)である転倒を予防することが重要である。講演の最後に横井先生らが考案した棒体操が紹介された。この棒体操は、身近にある新聞紙を丸めた簡単な棒を使用し、投げる・受け取る・回転させる・落下させる動作を多用し、バランスを崩した状態を幾度となく体に体験させておくというものである。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
 
3.まとめ
 認知症をひとつとっても専門職の違いで、異なった角度から捉えることができ、またそれを学んだ講習会であった。多職種連携が必要な医療現場においてお互いの専門職を理解し合うことの重要性を認識できたのではないでしょうか。
(研修委員長 荒木 善行)