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素問

平成31年3月素問勉強会(30年度)/著至教論篇(ちょしきょうろんへん)第七十五より2019.04.24

●日時:平成31年3月10日(日) ●会場:大阪府鍼灸師会館3階
●講師:日本鍼灸研究会代表 篠原孝市先生

・医道の日本 2019年3月号 『臨床に活かす古典№82 内経 その3』のお話より
 
 家本誠一氏の著作『黄帝内経素問訳注』『黄帝内経霊枢訳注』(医道の日本社)から教わった非常に重要なこと、それは正確な現代語訳ができなければだめなんだということである。白文を読むとなんとなく読めたような気分になる。訓読をみてもなんとなく読めた気分になる。しかし実際は現代語訳をすると、わけがわからないということが多い。現代語訳を正確にしなければならないということが、勉強になった。
 
 中国の郭靄春(かくあいしゅん)というひとの著作でも原文、原文の厳密な校訂、びっしりとつけられた考証、臨床的な解釈、現代中国語訳がちゃんとある。中国の良い本は現代語訳が皆ついている。現代語訳をしないと自分がどのように解釈しているかが読者に伝わらない。いい加減なものは現代語に訳すと、ばれてしまう。


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著至教論篇(ちょしきょうろんへん)第七十五
 
第四章
 
 帝曰く、三陽、獨り(ひとり)至る者は、是れ(これ)三陽并せて(あわせて)至る。并せて至ること風雨の如く(ごとく)なれば、上(かみ)、巓疾(てんしつ)を爲し(なし)、下(しも)、漏病(ろうびょう)を爲す。


(訳文)
 黄帝が言う。「三陽の経脈の気が一緒になってやってくると、あたかも風や雨のように押し寄せてきて、からだの上のほうでは巓疾という病気をおこし、からだの下のほうでは漏病を起こす。
 
(解説)
「三陽」を解釈するとき郭靄春というひとの解釈を採用することとした。それによると三陽とは、手足の三陽の気(手の太陽・陽明・少陽と足の太陽・陽明・少陽)のことと解釈している。
ほかに三陽というのは陽のもっとも強いもの、手足の太陽の経脈をさすという解釈もある。
 
 郭靄春は「獨り」を「」の字で読むべきだと言う。「濁」は「重」という文字と音が似ていて意味が重なる。「重」は「累」(かさなる)の意味がある。「三陽、重ね至る者は、」と解釈している。
 
「巓疾(てんしつ)」は、後の時代のてんかんに近いものと言われている。
 
「漏病」について新校正の注は楊上善(よう じょうぜん)というひとの注解を採っている。それによると「大小便が出てとまらない。下から漏らす病気」とある。
 
 
 外、期すること無く、内、正すこと無く、經紀(けいき)に中たらず(あたらず)。診、上下の書を以て(もって)別つべきこと無し、と。

(訳文)
「外邪の病というものは、からだの外側においても内側においても常なる状態にはない。きちっとした線引きのない状態になる。からだの上の方の病も、下の方の病も、診察しようとしても『陰陽傳(いんようでん)』という書物を使っても分別することはできない」
 
(解説)
 郭靄春というひとは著書『黄帝内經素問校注』の中で、周学海(しゅう がっかい)の『内經評文(だいけいひょうぶん)』を引く。ここでは「以書別(書を以て別つ)」に「」の字を入れて「以書別之(書を以て之れを別つ)」と文章をわかりやすくしている。また馬玄臺(ば げんだい)の注「かくのごときは又、書によってこれを知るのみ。その書物は『陰陽傳』である」という部分も引用している。
 
診無上下。以書別」を「診、上下の書を以て別つべきこと無し」と読むか、日本寛文三年本の読み方「診、上下無かずんば、書を以て別つ【症状が昏迷して、わけがわからない場合は『陰陽傳』という本で判別できるだけだ】」とするかで解釈が異なる。
 
 
 雷公曰く、臣が治、愈る(いゆる)こと疏(まれ)なり。意を説きたまわんのみ、と。

(訳文)
 雷公は言う。「わたしが治療してみても、あまり治るものがない。深い治療法の意味合いを聴いて、自分の治療に対するうたがいのこころを止めてしまいたい。だから、ぜひ話をきかせてください」
 
(解説)
「疏」の字、原文の字は足へんである。日本寛文三年本では「踈」の字となっている。
 
 日本寛文三年本では、上記「愈る(いゆる)こと疏(まれ)なり」の部分を「踈(まれ)に愈ゆ(いゆ)」と読む。
 
 ここの原文は雷公曰。臣治疏愈説意而已である。劉衡如(りゅう こうじょ)というひとが校訂した1963年人民衛生出版社横排本(いわゆる梅花本)、張燦こう(等)の『黄帝内經素問校釋』はこれを採用している。それに対して文章の切り方がちがう解釈がある。郭靄春(かくあいしゅん)、龍伯堅(りゅうはっけん)は雷公曰。臣治疏愈説意而已と文章を切る読み方を採用している。


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 道のりもそろそろ終盤です。『素問』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜です。
『素問』はまだしばらく続きます。そして『素問』の次は『霊枢』を予定しています。

 
 
(素問勉強会世話人  東大阪地域 松本政己)