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研修会&講座のお知らせ

平成30年度 第3回学術講習会報告①トップアスリートにおけるコンディショニングの実際2018.10.26


 
■日時:平成30年9月9日
■会場:大阪医療技術学園専門学校

【講演1】「トップアスリートにおけるコンディショニングの実際」
日本体育大学体育学部教授 杉田正明先生

 トップアスリートのコンディショニングを中心とした現場での支援をどのように行っているのか情報提供をして頂いた。コンディショニングのメンバーとして1991年から28年目で現在に至り、選手の支援活動を行っておられる。
 トレーニング効果を最大限に出して競技成績につなげるには、コンディショニング(体調管理、体調の可視化‥脈拍、体温、自律神経胃など)、トレーニング(効果的トレーニング)、リカバリー(疲労回復‥食事、睡眠、アイシングなど)この3つを調整することが、日々のトレーニングをより効果的に行うための観点であり、アスリートは、トレーニングの効果を最大限に発揮して良い競技成績を得るためにはトレーニングだけを一生懸命していても疲労回復が追いつかないので、オーバートレーニングの状態となり、出場の時点で手遅れとなる。
 アスリートは、トレーニングに問題があれば調整して、そのままいい状態で機能レベルや体力を上げていく方向でトレーニングとリカバリーとコンディショニングを行う必要がある。

 体調の可視化をするために日付・練習の内容、起床時に睡眠時間・そのときの目覚めの体調・体温・血圧・脈拍・体重、練習後の体重・故障の程度、寝る前の体重、昼寝の時間、その日の走った距離の合計を記録する。
 次に睡眠について、普段、主観的に8時間程度の睡眠をとっている大学のバスケットボールチームの選手たちに睡眠時間を延長させ、1日10時間の睡眠を5~7週間継続するように求めた結果、282フィート(約86m)走タイムや反応時間が有意に短縮し、フリースローや3ポイントシュートの成功率向上など、運動パフォーマンスに改善が見られた。睡眠延長時のPOMS(心理テスト)の結果、心の状況が良くなっている。

 睡眠延長できない場合は、昼寝30分でも効果があると報告されている。また、大学テニス選手に睡眠時間7時間を9時間睡眠に1週間延長させた結果、50球の正確性が35.7%から41.8%となった。テニスのサーブの成功率である運動パフォーマンスに改善が認められた。練習成果を高め、運動スキルを上げるためには睡眠延長が必要であることを示している。
 睡眠と運動能力について、①睡眠延長によるパフォーマンスの向上が得られることから、日々高強度の運動を行っているアスリートにとって十分過ぎる程の睡眠が必要と考えられる。②小学校から中学校、中学校から高校へと生活スケジュールが一変する時期には注意が必要である。

 就床時刻の後退は、睡眠時間の短縮に直結するため、コンディショニングの観点からジュニア選手の適切な睡眠時間の確保が重要となる。昼寝でも効果がある。次に体温の、一日のリズムは夜中2時から3時の朝低く、高くなるのはお昼から夕方くらいまでで、体温の高いときと低いときのスポーツパフォーマンスを調べた結果、体温の変動と競泳パフォーマンスの水準が高めの体温36.8℃で一致している。

 脈拍は、上がっていて急に落ちた場合、自律神経系の働きが弱っていて相当疲れがたまっている状態である。起床時の脈拍が高いと疲れた状態である。最近では、パルスオキシメーターで動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定する。
 コンディション管理のポイントは、酸素飽和度(%)/脈拍数(拍/分)この比が前日と比べて高いと調子は良い。低いと調子は良くない。この比が全体的に上昇傾向は良い。血圧も同じで調子の悪いときは低い。平地では、ほぼ酸素飽和度100%だが現実的には98%から99%である。

 最近では、「酸化度」「抗酸化度」を測定する装置を用いて活性酸素が筋肉の中に酸化ストレスとして溜まっていると負傷しやすいか回復しにくいかを調べた。200から300までが正常範囲。300を超えると活性酸素の影響を受けていると考えられる。300を超えた選手は、怪我、疾患、発熱など。酸化ストレスは同時に抗酸化ストレスが働く。病的でない限り320から340に抑えられる。
 抗酸化力を高めるための飲食を採り、睡眠時間や体のケアをすると数字が上がる。抗酸化力が高いとパフォーマンスが得られる。

 尿検査では、尿の色で尿比重計測器により1.020を超えると脱水症状である。計測器がなくてもカラーチャートで確認することができる。尿試験紙でタンパク質は、疲労時に出現。クレアチニンは、老廃物であるクレアチニンの排出をみる。phは、疲労からの回復を示す。通常は弱酸性(6.0~6.5)で、弱アルカリ性(7.5以上)は脱水疑い。胃薬を飲むと高くなる。白血球は、疲れが溜まってくると膀胱炎の炎症により排出される場合がある。

 コンディショニングチェックのために起床時に用いたアンケートの中で、寝ているときに何回も目が覚めた、何回もトイレに行ったとかで熟睡が妨げられているのは非常に良くない。今注目しているのは、腸の環境である。どんな良いものを飲食しても最終的には腸の中で消化吸収される。そして解毒能力と免疫力と浄血で腸内細菌と協力してビタミン、ホルモンで酵素を作る。腸内の環境をしっかり整えおかないと免疫力は低下する。

 リカバリーでは、
①ヒートショックプロテイン(HSP)・・・熱ストレスを体にかけるとそれに抵抗して特別なタンパク物質が作られる。がん治療で40℃を超える高熱のため何日間かで癌が消えた。42℃で10分。41℃で15分HSPは、熱から体を守るだけでなく、体内のあらゆる悪循環から、細胞を守る。壊れた細胞の修復、寒さや活性酸素・重金属・アルコール・炎症などによる体内のストレス作用がある。
②パフォーマンスを上げる入浴法とは、入浴による身体への影響がヒートショックプロテインの生産や免疫機能に影響を与え、運動能力の向上や疲れにくい身体になるので、入浴で体温を38℃以上に上げ、浴後20分は保温。週に1~2回の入浴法が理想的である。
 暑熱環境における実践的対策のポイントとして、
1,深部体温を上げないこと
2,体内の水分を失われないこと
3,ナトリウムやカリウム、カルシウムの損失を補うこと。
 練習前後の
1,体温の計測
2,体重の計測
3,汗の成分の計測を行う。

 一度は体を温め身体の機能を良くする。そして運動直前の体温を下げ、運動中の体温上昇をいかに抑えるかが重要である。体温が上昇(40℃超える)すると脳の血液循環が悪くなり、あるいは脳のグリコーゲンがなくなったりする。モチベーションが落ち、認知機能の低下、夢遊病の様な動きになる。
 心臓や筋肉の働きが悪くなり、脳と筋肉、心臓の働きが悪くなると意識障害を起こす。重要なのはクーリング戦略で、運動前と運動中に身体を冷やすことはパフォーマンスを向上するにはとても重要である。

 脱水は、体重の2%以上の場合パフォーマンスに影響する。個人によって汗の成分が違う。水分補給で水だけを摂取していると水中毒を起こし体液が薄まり機能不全を起こし亡くなる場合がある。ナトリウムはとても大事で0.1~0.2%の塩分をとりましょうと日本スポーツ協会のガイドラインに記載がある。スポーツドリンクは、ナトリウムが40mg以上あるのでよく考えてある。

(報告:研修委員 松岡 輝人)