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研修会&講座のお知らせ

平成30年度 第1回学術講習会報告②「鍼灸師ならではの災害支援を考える」2018.06.26


 
■日時:平成30年5月13日
■会場:履正社医療スポーツ専門学校

【講演2】「鍼灸師ならではの災害支援を考える」

 災害鍼灸マッサージプロジェクト代表 三輪正敬 先生
 
「そちらに鍼灸マッサージのニーズはありますか?」
 三輪先生は2011年の東日本大震災の時に、同職種では当時最大規模の団体であった災害鍼灸マッサージプロジェクトを立ち上げられた。
 震災関連記事の取材電話を受けてから3日後に早くも現場に行き、最初は少人数でボランティア活動を行っている内に、患者さんを診る際に血圧データをとってきたことで医師団にも信頼を受け、人手が足りないから手伝ってほしいとの要望を受ける。そこで、一時的ではなく、責任を持ち継続的な治療を提供したいという目的のもと、急遽20名のスタッフをまとめプロジェクトを立ち上げられた。
 そのような活動を続けている内に、日本プライマリケア連合学会から声がかかり、医療団へ鍼灸師を派遣することに至る。その後、2015年の関東東北豪雨災害、2016年の熊本地震でも支援活動をされている。
 

 支援活動についてよくある質問について、いくつかを以下に紹介させていただく。

①施術事故については全てHPにて公開し、ガイドラインにて対策を掲載している。

②宿泊費と交通費に関しては助成金にて全額支給されている。

③チームで活動を行うことで、一人がずっと現場にいなくても、引継ぎをして交代で現場に行くことで継続的に患者さんを診られるため、自身の生活も成り立たせることができた。

④治療中の心がけについては、地元の先生に配慮をし、自分達はあくまでも一時的な存在であり、症状について深追いせず、最低限、症状を悪くしないことを目的とする。そしてしっかり問診、切診をして病気や骨折、精神状態の悪化などを早期発見しフォローする。また鍼灸の治療効果がみられたことや、地元の治療院を所属に関係なく広告掲示することで、結果的に地元の鍼灸の普及にも繋がった。

⑤現場で特に大事にしていたことは、他の医療職との連携。キーパーソンは保健師で、患者さんの氏名、年齢、主訴、周辺症状、血圧、体温などや気になる症状を報告することで、医師や行政、他の医療機関と繋がっていった。特に医師とのコミュニケーションの為には、血圧や体温などの共通言語を使うことが不可欠。
 
 災害支援における鍼灸の有用性は、治療効果が有ることは勿論、様々な症状に対応でき、簡単な道具で出来て低コスト、また話をじっくり聞けて、さらに支援者の支援ができる、などという点でメリットが大いにあると言える。熊本地震では、災害関連死の方が直接死よりも4倍多いとの報告があり、この関連死を予防する意味でも、鍼灸の有用性は大きい。
 ただ、この有用性を生かすためには、鍼灸だけをするという意識では不十分であり、被災地の患者さん、行政、他の医療種、同職種間のコミュニケーションをしっかりとり、現場現場に合わせた避難者のニーズをしっかり把握することが重要である。コツは、「鍼灸をしに行こうと思わないこと」。今後もし地元で災害が起きた場合に支援を考えている鍼灸師は、日頃から地域医療に携わることでより有機的に動けるようにしておく。
 今後の被災鍼灸の課題の1つとして、被災時に鍼灸が役に立つというデータを蓄積証明することがあり、災害派遣に必要な医療職と認められることを目指していく。三輪先生は実際に災害支援時の鍼灸に効果があるという内容の英語での論文を書かれている。

 まとめとして、支援をする上で最も大切なことは、自分のしたいことを優先するのではなく、被災地のことを一番に考えること。
 つまり、
 
①相手に迷惑をかけない
②鍼灸の仕事だけにこだわらない
そして特に重要なのが
③皆が仲良くすること
である。
 
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 今回の講義を拝聴し、鍼灸師としての被災地における有用性を知りました。また、一人で活動する以上に、チームで連携することでその可能性は飛躍的に広がることを示していただきました。その為には、日頃から他の医療職を含めた人とのコミュニケーション能力の向上、さらにボランティアをする際の心構えを確立しておくことが必要だと感じました。
 災害支援に限らず、ボランティアの精神は鍼灸師として必要だと感じましたので、まずは身近なところから何か自分にできることを探し、いつでも実践できるように準備していきたいと思います。

(研修委員 上田里実)