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研修会&講座のお知らせ

29年度 第3回学術講習会報告②「災害支援活動における、被災者及び支援者のメンタルヘルス」2017.08.28

■日時:平成29年7月9日(日)
■会場:大阪医療技術専門学校

【講演2】「災害支援活動における、被災者及び支援者のメンタルヘルス」
 大阪府こころの健康総合センター 平山照美先生 大矢寛子先生

 精神保健福祉センターとは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」により都道府県及び政令指定都市に一箇所設置されるもので、大阪府には「大阪府こころの健康総合センター」「大阪市こころの健康センター」「堺市健康センター」の3箇所が設置されています。今回は災害時の避難後における被災者とその支援者のメンタルヘルスについてご教示頂きました。

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 2011年に起きた東日本大震災の際に、全国からこころのケアチームが派遣されたが、事前に広域災害に関する研修や訓練を受けた組織ではなかったため、現場では上手く機能せず課題が残った。このような経験を参考に全国的に組織され運用されるようになったのが「災害派遣精神医療チーム」DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)である。チーム構成は精神科医・看護師・業務調整員(ロジスティック)からなる。災害時に医療だけでなく精神面のサポートも出来る体制が整ってきている。
 直近では福岡・大分の豪雨土砂災害があり、多くの命が奪われ、また家屋を失った方もあり、現在も避難所生活を余儀なくされている。そこに支援者として被災地で活動する医療チーム・警察・消防・自衛隊や市町村職員が、救助や搬送、行方不明者の捜索や避難所の設営などに当たっている。このような混乱した状況の中、被災者とその支援者の精神的ストレスの違いについて学ぶ。
 被災者は災害情報の遅れや混乱による不安、慣れない避難所生活や今後の仕事や学校など、実生活に対して大きな不安を持つ。また、生死に関わる危険な体験や死傷者の目撃や死別・喪失などでこころに傷を負っている事(トラウマ)がある。トラウマによる不眠やその他不定愁訴をトラウマ反応と呼ぶが、誰にでも起こり得る。大部分は時間の経過と共に治まっていくが、反応の現れ方や回復の仕方は人それぞれ違い、一部の人は専門家による治療が必要な場合が出てくる。その反応が一ヶ月以上続く状態のものがPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。避難所生活が長引けば精神的・肉体的苦痛も更に大きく長く続いて、心身ともに疲弊していくことが予想される。
 こころに傷を負った者に対応する基本的姿勢をWHOなど世界的に広くガイドブックとして示されている。これをサイコロジカルファーストエイド(Psychological First Aid:PFA)日本語で言うと「心理的応急処置」。これは被災直後の被災者への基本対応の手引き書である。詳しくは、大阪府鍼灸師会ホームページ「災害」のバナーにも掲載されているのでご覧いただきたい。
 一方、被災地で活動している支援者であるが、特に地元の市町村職員などの公務員は違った精神的ストレスを抱えている。同じ地元の被災者でありながら、公務を優先しなければならず、復旧作業や住民への対応、外部支援者の受け入れ調整などからオーバーワークとなる。使命感から無理をするが混乱した状況下では上手くいかないことが多く、被災住民からは怒りの感情にさらされる。自分の家族は後回しとなり、結果的に住民・上司・部下・外部支援者・家族との多面板ばさみ状態に陥る。被災者でありながら、支援者でもある葛藤を抱える。このような状況が続くと心身が極度に疲労し、手に負えなくなり活動への意欲が一気に失せて病的状態に陥る。
 このように支援を受ける側と支援する側のそれぞれのおかれた立場の違いを理解することが必要である。
 ところで、我々鍼灸師などの対人援助職のメンタルはこの支援者のメンタルと似たところがあるという。何とか(楽に)してあげたい、どうにか助けて(治療して)あげたいと熱心にかかわろうとする。自己の感情が不快な状態でも感情をコントロールし、患者やお客様(被災者)に治療や丁寧な応対(援助)をしなければならない。職業柄とはい抑え込んだ過剰なストレスが長く続くと、心身症やこころの病気に陥りやすい。
 メンタルヘルス(こころの健康)を保つには、ストレスと上手く付き合うことが大切。一人で悩んだり、一人で頑張らないこと。ストレス度チェックなどの検査を受けて、ストレスサインに早く気づいて、身体を動かす、気分転換を図るなどストレスを溜め込まないように、自身のこころの調整を図ることが肝要である。
 大規模自然災害が毎年のように起きている日本では、いつ我が身が被災したり、支援する立場になるかもしれない。普段からそのような事態に備えて考えておくことが大切である。
(研修委員会委員 賀来祥克)