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研修会&講座のお知らせ

29年度 第1回学術講習会報告22017.05.20

講演2:「認知症と鍼灸治療」

       講師:京都府立医科大学医学部医学科 
          在宅チーム医療推進学(神経内科学)

                       建部 陽嗣 先生

 日本の超高齢社会は、たった24年で現在、世界トップの39.9%の高
齢化率になっている。大阪府のような都市部の高齢化には①マンションから
の外出困難 ②近隣住民との関わりの希薄 ③引きこもり ④買い物難民の
問題とともに移動能力の低下が挙げられる。同居型高齢者でも移動能力に障
害のある人は無い人より3.17倍孤立しやすい。また、日本の認知症の有
病率が2002年の予測よりはるかに上回り、2015年の女性の死因にア
ルツハイマー病が初めて10位に入ることとなった。認知症の鑑別診断で、
原因疾患の分類と頻度では、AD(アルツハイマー病)45.2% VD
(脳血管性認知症)29.4% DLB(レビー小体型認知症)4.3%が
あり、福岡県久山町の研究がデータ管理されている。ADの診断基準や症状、
診断、病理学的特徴、脳病態の時間経過と臨床徴候、画像診断、生化学BM
についても詳しく解説された。その中で、ADでは記憶障害が主症状で記憶
の場である海馬に病変が初発する。鍼で海馬の血流が変化すること。病理学
的にはアミロイドβタンパクの蓄積が最も早期に出現するが、Aβを失くす
薬の開発は悉く失敗している。脳病態ではタウ蛋白の異常リン酸化で神経原
線維変化がおこり神経細胞死によりADの発現となる。ADの治療薬につい
て認知症が増えれば、高額な医療費により国を圧迫する。費用対効果が少な
いこと。新規治療法の開発が急務な疾患では、ADは第2位である。ADの
危険因子は加齢が一番だが、ダウン症候群では40才でADを発症したり、
頭部外傷や糖尿病もADの発生のリスクとなっている。

 「認知症疾患治療ガイドライン2010:予防」に「ADを予防(一次予
防)ないしは進行を遅らせる(二次予防)方法は確立していないこと」が明
記されていて、降圧剤とコレステロール血症治療薬については予防と関係し
ない。運動は予防効果があるもどのような運動をどの程度の頻度でどのよう
な強度で行うべきか、ADを特異的に予防するかについては結論がでていな
い。鍼も運動と同様であると言及された。疫学からの知見で、65~90歳
の認知症でない高齢者1686人の196人(11.6%)が認知症を発症
した。通常ベースの歩行速度が遅く、歩幅が短い人の認知症発症率は、それ
ぞれ3.46倍、2.12倍であった。肥満は高BMIは認知症リスクの低
下、ADリスクの低下と関連していた。以外な結果の報告も知り得た。夫婦
同居で、子供と週1回以上会う、友人または親族と週1回以上会う人に比
て、週1回未満しか会わない閉じこもりの人は、認知症発症危険度が8倍も
高くなることから、「鍼に週1回来院するだけでもリスクの低下になる」と
発言され、とても説得力のある言葉であった。サプリメントには予防のエビ
デンスはなく、魚・ビタミンE・ワイン・緑茶の適度の摂取量は危険度を低
くする。「100歳の美しい脳」という本に、修道女を対象に加齢とADに
ついて研究した結果、修道女の3分の1は死後に脳を調べるとADと見られ
たが、実際に認知症の症状があらわれたのはその半分に過ぎないという結果
から、「脳の変化と発症は関係ない」ことにも言及された。

 認知症に対する鍼灸について、国の認知症対策に厚生労働省、全国介護保
険高齢者保健福祉担当課長会議資料 H29.3.10の改定後に、あん摩
マッサージ指圧師、はり師、きゅう師と記載された。

 AD患者に対する鍼治療の有効性および安全性についてMMSEが改善し、
血管性認知症に対する鍼治療でもMMSEの改善がみられた。基礎研究でマ
ウスを使った実験で鍼の有効性が得られている。よく使われている経穴に百
会・足三里・血海・四神聰がある。兵頭明氏が唱える三焦鍼法の紹介もあっ
た。

 鍼灸の効果を講演の中に織り交ぜて熱く語って頂いた、。鍼灸が認知症に
対して如何に貢献できるか、効果があるか、ということを、臨床をしている
私たちが自信を持って治療にあたり、一人一人の少しずつのデータが集積し、
人々の信頼が得られ、国をも動かす力になればと痛感した。

                     (研修委員会 思川 裕子)