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研修会&講座のお知らせ

29年度 第1回学術報告12017.05.20

■日時:平成29年4月9日(日)
■会場:森ノ宮医療学園専門学校 アネックス校舎4階


講演1:「認知症に寄り添うために必要な知識と評価方法」 

        講師:筑波大学大学院人間総合科学研究科 
                         水上 勝義 先生 

 認知症患者数が2013年462万人、軽度認知障害が400万人との
報告がある。2025年には、認知症患者数が700万人になり、認知症
高齢者は年齢とともに増加し、90歳以上では50%が罹患していると危
惧されている。

 認知症は、記憶障害が必ずみられるわけではなく、一度獲得した知的な
機能(認知機能)が、日常生活に支障が生じる程度に低下した状態であっ
て、生活機能の障害(日常生活ができなくなること)が重要となる。

 アメリカでは、認知症の発生率が下がってきていることから、予防がで
きるのではないかと期待されている。

 認知症の症状には、中核症状(記憶障害、見当識障害、実行機能障害、
視空間認知障害、失語・失行)、行動心理症状(BPSD)(妄想・幻覚
・脱抑制、不安・焦躁・興奮、うつ・アパシー、睡眠障害、徘徊・攻撃的
言動)、身体症状(歩行障害、嚥下障害、自律神経障害、パーキンソン症
状)が認められる。

 認知症になる疾患(アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小
体型認知症)による症状の出現の仕方や時期(初期から進行具合により)
が異なるため、鍼灸師の立場から疑いをもって鑑別することもでき、鍼灸
の活かされる所がある、と言及されていた。初期の認知症を軽度認知機能
障害(MCI)と呼ぶ。認知機能レベルでは正常と認知症の間に位置し、
アルツハイマー病をはじめとする認知症の前駆症状を含んでいる。年間10
%程度が認知症に進行するが、2~3割は正常に回復している。アルツハイ
マー型のMCIではアリセプトの投薬ができないため、鑑別診断の精度を
向上させるか、有効な進行抑制方法・治療法の開発が必要である。認知機
能の評価はHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やMMSE
などを用いる。総得点だけでは認知症の疾患として引っかからない場合も
ある。うつ病が入っているかどうかや、項目の失点パターンや検査態度も
評価に関わってくることを指摘された。

 認知症疾患の割合として、臨床診断と死亡時の病理診断では、異なって
いることがあり、レビー小体型認知症が臨床診断では正しく診断されない
ことで、過少に評価される傾向にある。また、回復可能な認知症の原因と
してうつ病が1位に、薬剤性認知障害が2位に挙げられている。処方数の
増加と共に認知機能障害のリスクも増加し、2~3剤で2.7倍、4~5
剤で9.3倍、6剤以上で13.7倍にもリスクが上がり、薬局の一元化
対策などの課題も指摘された。また、慢性硬膜下血腫や正常水頭症による
認知障害の出現も解説された。

 順次、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・脳血管性認知症・
前頭側頭型認知症についての特徴、(認知機能障害・BPSD・神経身体
症状・治療方法・画像診断など)を詳細に解説された。

 アルツハイマー病のBPSD(行動心理症状)では、抑うつ(元気がな
い、つらさがある)やアパシー(何も意欲がなくなる・自分のつらさがな
い)との鑑別が大切である。SSRI(抗うつ薬)の副作用にアパシーが
あることや被害妄想のために、一番面倒をみてくれた人が対象になりやす
い。レビー
小体型認知症は第3者が対象となり、せん妄はアルツハイマー病より4~
5倍なりやすいなどの特徴。抗認知症薬やBPSDの誘因となる薬物の副
作用まで広範囲に解説された。

 BPSDに対する漢方薬(抑肝散)の効果にNPI(介護者による精神
症状を評価するための方法)
の尺度を用いて評価(項目:妄想・幻覚・興
奮・うつ・不安・多幸・無関心・脱抑制・易刺激性・異常行動)すると実
際にはBPSDは良くなっているにもかかわらず、介護負担感が減ってい
ない。そして、介護者のうつ病の頻度も同年代の介護をしていない人に比
べて3倍から36倍高いことなども問題視された。

 認知症予防介入研究では、サプリメントの服用・有酸素運動・睡眠改善
と短時間昼寝を3年間介入後、有意に改がみられた。認知症の鍼治療にメ
タ解析のデータもあり、MMSEに、鍼+ドネペジル(抗認知症薬)はドネ
ペジル単独より効果があることや興奮・攻撃性に対する項目も効果を挙げら
れた。鍼治療への期待もあり、レビー小体型認知症に対する自律神経障害
(便秘、排尿コントロール、血圧の安定)の改善やパーキソニズムの改善や
感覚異常(四肢の痛み、しびれ、熱感など)の改善に薬の副作用がでやすい
こともあり、薬より鍼の方が良いのではないか?と講演の中でも度々、鍼治
療への期待を投げかけておられた。

 今回のテーマでもあるように認知症への知識を深め、評価方法も知ること
で、MMSEは病院だけでなく鍼灸師でもできることなので、できるだけ早
期に認知機能レベルがわかれば、軽度認知機能障害(MCI)から正常に回
復する手助けになり、知識がありながら鍼治療に臨めば、認知症の進行度に
よるBPSDや自律神経障害などの改善にも役立てることができると思った。 
(研修委員会 思川 裕子)