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研修会&講座のお知らせ

平成28年度 第7回学術講習会報告22017.03.14

講演②:「筋肉痛の基礎知識と鍼灸治療」

        講師:森ノ宮医療大学保健医療学部 鍋田 智之先生
 本日は、我々鍼灸師にとって最も対応する機会の多い症状の一つであ
る「筋肉痛」、その基礎知識と鍼灸治療について分かり易くご講義頂き
ました。

 先ずは、筋細胞の構成と筋原繊維、又その最小単位である筋節(サル
コメア)の説明をされ、筋原繊維はこの筋節が複数繋がったものであり、
その中にアクチンやミオシン等いくつかのタンパク質やカルシウムがあり
それぞれ、筋肉の収縮、弛緩のメカニズムについて解説がありました。

 筋肉の痛みは、凝りにより(勿論、ストレス等内因から来る物も含む)血
流が阻害されて起こるものや、不慣れな運動後に遅れて発生する筋肉の
痛みなどがある。前者の方は、臨床の場でほぼ毎日遭遇するものですが、
ここでは割愛して運動後の遅発性筋痛の話をします。

 通常は強い運動負荷又は不慣れな運動後二、三日でピークとなる痛み
が出現し、その後徐々に軽減すると言うように、時間を置いて起こるも
のが「遅発性筋痛」です。

 遅発性筋痛の発現メカニズムは未だ不明ですが、いくつかの説があり
ます。
 まず、筋肉の疲労物質である乳酸の蓄積で発症するとされる説ですが、
乳酸濃度は運動後30~60分で回復することなどから遅発性筋痛と時間軸
が異なり、否定的です。主要な説は、運動によって傷ついた筋繊維を修
復しようとするときに起こる炎症が関与した痛みであろうということで
す。

 この説の概略は、以下の①から③で示すことができます。

 ①普段使わない筋肉を突然使ったり同じ筋肉を使いすぎたりすること
  で、筋肉を構成している線維(=筋線維)や周りの結合組織に微細
  な傷がつく。

 ②傷ついた筋繊維を修復するため炎症反応が起こる。

 ③組織で産生されたタンパク分解酵素などによって周囲の組織が破壊
  され、遅れて痛みが出現する。
 
 最近では、筋膜の関与や神経成長因子の関与が指摘されています。神経
成長因子を筋膜に注入すると筋肉痛が出現し、逆に拮抗薬を注入すると筋
肉痛が消えるようです。筋膜は痛みの受容器が多く集まっていますし、筋
膜を治療の対象とするとした考えもあります。

 遅発性筋痛に対する鍼灸治療ですが、豪鍼以外にも円皮鍼や鍼通電を用
いて検討した報告があります。共通して言えることは、治療によって遅発
性筋痛が速くピークに達し、速く回復するということです。我々の成果で
は、運動の直後に筋肉痛発症部位を予測し、適切に施術することで早期回
復と圧痛や硬結が残ることを防ぐことが出来る可能性が考えられました。

 又、前述の筋膜の関与を考えると、侵害受容器の分泌も密である筋膜に
鍼を刺入することが有効であると考えられます。実際に鍼施術を超音波エ
コーで観察すると、筋膜の変形や手技によって筋膜が大きく動いている
ことが分かります。

 まとめると、

①遅発性筋痛のメカニズムについては研究が不足しており、今後の研究結
 果がまたれます。
②遅発性筋痛に対する鍼刺激の効果は研究報告数が少なく、更なる研究が
 必要です。

③遅発性筋痛に関する研究をする上で、筋膜に着目して鍼刺激の効果を検
 証してはどうかと考えます。 

                     (研修委員  中川 欣久)