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素問

28年11月素問勉強会/至真要大論篇第七十四注  第三十七章より2016.12.31

●日 時 : 平成28年11月13日(日) ● 会 場 : 大阪府鍼灸師会館 3階 
●講 師 : 日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
 
医道の日本誌11月号 臨床に活かす古典 『№55 誤治』のお話より
 誤治でやっかいなのは禁鍼穴、禁灸穴である。それに近いものは『素問』
刺禁論に出てくる。まとめられたのは『針灸甲乙經』巻之五である。この中
に禁鍼穴条文14条、禁灸穴条文25条がある。(これは『素問』刺禁論の
内容とは異なる)
 鍼を刺す害、お灸をする害というのは、つぼという場所と結びついた形で
認識されたのだと思う。禁鍼穴、禁灸穴の大きな欠点というのは、たとえば
中府穴に深く刺すと逆息(気胸)になるというのはわかるのだが、それ以外
のものは場所と結びついているという事で、段々意味が無くなってきたもの
と思う。禁鍼穴、禁灸穴が出た時には、おそらく今より太い鍼を今よりも深
く刺すという事であったと思う。どこの国でも近代化してくると、段々鍼と
いうのは繊細になってくると思うので、そうなってくると深く刺すことによ
る害というのは少なくなる。禁鍼穴というのは、恐らくそこで段々無力にな
って来たのだろうと私は思っている。それから禁灸穴であるが、これも恐ら
く壮数の多さという事と関係があるのだろうと思う。壮数が三壮、五壮とい
う事になれば、施術による害というのは相対的には少なくなると思う。鍼も
灸も体に害を及ぼすので多くない方が良い。だんだん量が少なくなってくれ
ばその害というのは収まる。『鍼灸甲乙經』巻之三に349穴のつぼの記述
があり、つぼ毎に鍼の深さと灸の壮数が記入してある。恐らく『鍼灸甲乙經』
に禁鍼穴、禁灸穴が著された時には、それ自身が、あまり意味が無くなって
いたのでは無いかと思う。記述にある一分とか二分とかの深さを、どこに刺
してもそんなに危険があるわけでも無いので、恐らく禁鍼穴、禁灸穴の記述
は、その前の時代の段階のものを総括したものであろうと思う。
 診断法というのは経絡治療、その他の方法、何れでも構わないのであるが
一定の方法を取らなければならない。一定の方法を取り、その元で何をした
時に症状が悪くなったのかという事を判断しないといけない。長い間仕事を
してきて、そのように感じる。必ず一定の治療法の方向が無いといけない。
効かないから別のことをやって、又効かないから別のことをやってという事
を続けていると、何が効いて何が効かないのか全然わからない。必ず一定の
治療法をやる。治療法というものを一つはきちっと確立しておく。どんな方
法でもいいから治療法を確立しておくというのは必要である。そして治療法
には診断というものが有った方がいいと思う。診断にも色々有り、こういう
方法で無ければいけないとは言わないが、診断は必ず有った方がいい。

■『素問』至真要大論篇第七十四注 
第三十七章より抜粋
 諸の勝復を治するに、寒なる者は之れ(これ)を熱し、熱なる者は之れを
寒し、温なる者は之れを淸し(ひやし)、淸なる者は之れを温め、散ずる者
は之れを收め、抑する者は之れを散じ、燥なる者は之れを潤し、急なる者は
之れを緩くし、堅き者は之れを耎(せん)にし、脆き(もろき)者はこれを
堅くす。衰うる者は之れを補い、強き者は之れを寫す。各々其の氣を安んじ、
必ず淸く必ず靜かなれば、則ち病氣衰え去りて、其の宗とする所に歸す(帰
す)。此れ治の大體なり、と。

 「勝」特定の気が盛んになること。「復」勝の気を抑えるために、それに
対する五行の相剋の気が盛んになること。「勝」や「復」という状態が極端
に出てくる時に、自然界の乱れや病氣というものが起こる。それを治療する
には次のような原則が必要である。体の中に寒という状態がある場合は熱薬
を、熱という状態がある場合は寒薬を与えてやる。体の中に温熱、温病(う
んびょう)が有る場合は清涼作用のある薬を、寒證(かんしょう)がある場
合は温熱作用のある薬を与えてやる。
 陽の気が上がってしまった状態が体の中にある時は、それを抑える薬を与
える。陽の気が抑えられた状態が体の中にある時は、それを発散させる薬を
与える。乾燥しているものは潤す。
拘急してひきつっている状態は緩くして
やる。大便が秘結する時は便をやわらかくする薬を与える。下痢の時には便
を堅くするようにする。気が無いものには気を与えてやり、気が余っている
ものには瀉法を施す。五蔵の気、経脈の気の状態を安定させてやる。正常な
状態は必ず清く、必ず静かという状態である。そういう状態にすれば病の気、
五蔵の気が偏った状態は解消される。特定の盛んになっている気を衰えさせ
て正常に帰す。本来のあるべき状態に、それぞれを帰してやるという事が治
療の大本である。    
(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本 政己)