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研修会&講座のお知らせ

平成27年度3月度学術講習会報告2016.04.07

◆日 時 : 平成28年3月6日(日)

◆会 場 : 森ノ宮医療学園専門学校 本校舎6階

◆主 催 :(公社)大阪府鍼灸師会

〈報告1〉
   「21世紀の日本の鍼灸の活路」
    − 健康に関する各年代の政策の概要と変遷をふまえて−
       講師:(公社)未来工学研究所 22世紀ライフェンスセンター
                      主任研究員 小野 直哉 先生

 小野先生は明治鍼灸大学を卒業後、主に医療・経済・環境の分野で幅広く研究を
されています。今回、140枚ものスライドを使い、非常に中身の濃い多くのこと
を、90分の講義で教えていただきました。
 今から150年前の明治維新から第二次大戦前、戦後から現代までの「健康」
に関する国家政策の移り変わりの概要を、時代毎に振り返り今後の展望を考えよう。
 明治維新から第二次大戦前までは、「富国強兵」つまり国を豊かにする為、強い
兵士を養成し、労働力の確保のために国民の体力を向上させる一方、疾病を予防す
る「衛生」という政策が取られ、急性感染症・伝染病(コレラや結核)の抑止も課
題だった。1938年に厚生省が大日本帝国陸軍により創設されたことはあまり知
られていない。
 戦後の混乱期以降、急性感染症は沈静化し、栄養状態がよくなり総死亡率・乳児
死亡率は大幅に減少し、平均寿命が大幅に延伸した。日本の平均寿命が50歳を越
したのは1947年のことだ。1970年代
には、高度経済成長を遂げ国民は豊か
になり、政策課題は、脳血管疾患・ガン・心疾患などの生活習慣病へと変化してい
った。

☆今後の日本が抱える3つの課題
 ①デフォルト(日本国債の債務不履行)
 ②超少子高齢・人口減少社会(就労人口の減少、社会保障費の増大、2025
  年問題)
 ③ネクストクライシス(大規模自然災害)
 ・被災後のヘルスケア:ライフラインや物流が寸断後、被災地に医療支援など
  が行き届かず、被
災者の健康を維持するために、西洋医学のみのケアでは限
  界が
ある。
 ・米国やキューバを例に挙げると、どちらも災害時の医療の補完・代替医療と
  して、またPTSD
のケアに鍼治療を取り入れている。
 ・特にキューバは米国による経済制裁と旧ソ連の社会主義経済圏の崩壊により、
  エネルギーと物
質不足から「持続可能な医療」の模索を余儀なくされた結果、
  西洋医学と伝統医学と代替・補完医療を「統合」したハイブリットな医療体
  系を独自に構築し実
践しており、まさに統合医療大国となっている。学ぶべ
  き所が
あるのではないか。

☆鍼灸の長所である機能的多様性
 鍼灸は「医療」として疾病の治療が出来るし、「慰安」(癒し)としてストレ
スのコントロールにも使える。故に、「傍らで見守る医療」にも「地域包括ケア
システム」にも人間の尊厳を保障するための「生活の支援」にも、対応できる多
様性がある。

☆鍼灸が求めるべき5つの領域
 ・臨床医療領域-治療(病院・診療所・鍼灸院)
 ・介護領域-予防、認知症周辺症状の軽減
 ・社会医療領域-公衆衛生(疾病予防、健康増進)
 ・災害医療領域-災害発生時のヘルスケア
 ・慰安領域-ストレス管理、リラクゼーション、(癒し)

☆鍼灸師に求められる9つの技能
 ①鍼灸学の知識
 ②鍼灸学の技能
 ③臨床医療の知識
 ④介護の知識 
 ⑤社会医学の知識 
 ⑥災害医学の知識
 ⑦コミュニケーション能力
 ⑧信念対立解明力
 ⑨教養
 要するに多職種連携・協働が出来る能力と教養を磨かなければならない。そし
て、今後専門医より家庭医(かかりつけ医)が増えていくであろう時代に、鍼灸
師も鍼灸院や病院だけでなく、在宅や地域への生活支援型の対応をしていかなく
てはならないだろう。小野先生からは、本会が進めている介護予防認定鍼灸師制
度を高く評価していただきました。
 先生の信条とする2つの言葉。
「ある日の真実が、永遠の真実ではない」(チェ・ゲバラ)
「見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい」(マハトマ・ガンジー)
    この言葉を私も胸に留めておきたい。(研修委員会委員 賀来 祥克)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・:D
〈報告2〉
 「漢方薬の活用」 −基礎から、実践まで−
  講師:大阪府薬剤師会 杉本 幸枝先生(キリン堂未病医療サポート部署に所属) 

 今回の研修では、漢方薬の現状についてのお話でした。ツムラ医療用漢方製剤
ベスト20で、上位1位の大建中湯は、手術後の腸閉塞予防に用いられていること。
2位の芍薬甘草湯は、スポーツのプレー前や夜中の足の引きつり(コムラ返り)
に用いられていること。3位の抑肝散は認知症の周辺症状に用いられ、4位の六
君子湯はエビデンスがしっかりしていることを上げられました。
 また、全国一般用医薬品パネル調査データでは、CM(コマーシャル)に流れ
ている医薬品が、漢方薬と同じであることがわかりやすいものとそうでないもの
があり、実際の映像を基に解説頂きました。防風通聖散→ナイシトール 葛根湯
→カコナール 八味地黄丸→ハルンケアなどです。患者様が、CMを見てお薬を
求めに来られた時に、ドクターからすでに医療用の同じ処方薬が出されているこ
とを知らずに求められていることがあるので、注意が必要だそうです。
 一般の方には、「漢方薬は副作用がない」、「長期服用しないと効かない」と
誤った認識を持っている方があります。
 漢方薬の添付文書の「しばり表現」、例えば、防風通聖散や麻黄湯や大柴胡湯
には「体力充実」、桂枝湯には「体力虚弱」、五苓散には「体力にかかわらず」
という表現が用いられていることについても解説頂き、一般用漢方薬の副作用
(間質性肺炎・偽アルドステロン症・ミオパシー・肝機能障害・黄疸)に注意を
要することも言及されました。
 漢方薬について「同病異治・異病同治」の考えや民間薬との違い、漢方の三大
古典について、そして「証」
(虚実・寒熱・表裏・気血水)と五行説(五味)の
考え方について説明後、実例をご紹介頂きました。例えば、外邪である風邪(ふう
じゃ)にあたった時(かぜの引き始め)に、葛根湯を温服するだけで効果がなかっ
た人は、温服後にお布団にくるまり、汗を出すことが肝要だそうです。胃の丈夫な
方は、もう一服することも良いそうです。
 最後に漢方に期待できることとして、①ホメオスタシスの向上②西洋薬の副作
用の軽減③西洋薬の苦手な症候に対応④未病対策、QOL改善を挙げられました。
鍼灸師が、登録販売者の免許を取得することや地域在宅医療に関わることで、よ
り鍼灸の幅が広がることも言われていました。
 薬剤師の杉本先生は月2回、鍼灸院に通われて、美容鍼も受けられ、日々の体
調管理をされているそうです。
 漢方に期待できることは、鍼灸にも期待できることだと思います。また、会場
からも質問がありましたが、鍼灸院に来院する患者様で漢方薬を探されている方
も多く、漢方薬を扱っているお店や価格や形状(エキス剤・生薬)など、どこへ
紹介したら良いか悩まれていました。他分野の医療従事者との連携を益々求めら
れる時代だと認識しました。       
(研修委員会委員 思川 裕子)