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平成28年2月素問勉強会/至眞要大論篇第七十四注 第十五章~第十六章2016.03.05

日 時:平成28年2月14日(日)  ●会 場:大阪府鍼灸師会館3階 

●講 師:日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生  
 
●『医道の日本誌』2016年2月臨床に活かす古典 「№47 臨床」 のお話より
(『医道の日本誌』1959年5月~1962年10月、経絡治療座談会の発言を引用しなが
ら)井上恵理が語っている言葉が非常に面白くて、これは私が井上系の経絡治療を
やっているからという事もあるのかもしれない。井上恵理はこんなことを言ってい
る。「うちに来る患者さんの50%ぐらいは精神労働をされている方であり、残りは
肉体労働の方である」
 井上は5時間で90人ぐらいの患者を診ていたといわれている。朝9時から午後2時
まで、井上が診た患者の中で半分ぐらいは精神労働の人であった。ここで精神労働
というのは、単なるホワイトカラーということでは無い。これは内因性の病のこと
である。精神労働と言っている意味は五蔵の病、蔵病だと言っている。外因性、外
傷性の病と言っているのは筋肉労働をする人の病のことを指している。それは五蔵
のところまで病が行っていないものを言っている。精神労働を主体としたものに関
しては、五蔵まで病が行っているからこれは本治法が有効である。しかし五蔵まで
病の行っていないもの、もっと浅いものというのは必ずしも本治法は必要では無い
本治法をしても構わないが、必ずしも必要では無いというふうに先ず分けている。
これは、座談会の記事の中で読んでいると見落としてしまうような部分では有るが、
考えてみれば非常に画期的な事でもあり、経絡治療が本来目指したものというのは、
精神的な労働の患者「五蔵に病が及んでいる患者」を対象とする治療と言える。し
かし、肉体労働をすごくやっても五蔵に病が及ぶかも知れない。その場合は直接五
蔵の病では無く、外から内に向かってというような発想である。

●至眞要大論篇第七十四注 第十五章~第十六章
第十五章より
 曰く(いわく)、善し。天気の變(へん)何如ん(いかん)、と。
 岐伯(きはく)曰く、厥陰の司天は、風(ふう)の勝つ所に淫すれば、則ち(す
なわち)太虚埃昏(たいきょあいこん)、雲物(うんぶつ)以て擾る(みだる)。
寒、春氣(しゅんき)を生じ、流水冰らず(こおらず)。民の病い、胃脘(いかん)、
心に當りて(あたりて)痛み、上み(かみ)、兩脅(りょうきょう)を支え、鬲咽
(かくいん)通せず、飮食(いんしょく)下らず、舌本(ぜっぽん)強ばり(こわ
ばり)、食すれば則ち(すなわち)嘔す(おうす)。冷泄腹脹(れいせつふくちょ
う)、溏泄(とうせつ)し、瘕し(かし)、水閉(すいへい)す。蟄蟲(ちっちゅ
う)去らず。病い、脾に本づく。衝陽絶すれば、死して治せず。
 帝は言われた。「司天の気(一年を60日毎六つの期間に分けた第三期で2016年で
は小満【5月20日】~大暑【7月22日】に当る)に六気のうちの一つ一つが来ること
によって、一年間にどのような自然現象の変化が起こるのか」 
 岐伯が言うには「厥陰の気が司天に来れば(巳【み】の年と亥【い】の年がそれ
に当る)、風というものが力を及ぼして、肝の蔵が強くなり脾に影響をおよぼす。
太虚埃昏(たいきょあいこん)、空がちりで霞んで暗くなる。雲(天のもの)と物
(地のもの)が安定せず天気の変が起こる。本来まだ寒いはずなのに、過剰に暖か
くなって流れる水が凍らない(「流水冰らず」は過剰な暖かさを表す表現)。木が
土を尅するので胃が痛む。下から上に向かって突き上げていくような痛みがあり、
両方の脇が突っ張る。モノを食べてもモノが下って行かない。舌がうまく動かなく
なってモノを呑み込めない。食べてもそれがすぐに出てしまう。あまり濁っていな
い水様便が出てくる。
おなかが張る。水様便が出て、腹部に硬結が出来る。小便は
全く出ないか又はタラタラとしか出ない。冬の間に冬眠している虫が暖かいので地
表に出てくる(ここは「蟄蟲去らず」という文章が訓詁【くんこ:一つ一つの字句
を注釈する】ではうまく解釈出来ないので、「六元正紀大論」「五常政大論」の厥
陰司天の項目を参照する)。 
 病気は木(蔵は肝)が土(蔵は脾)を尅して影響を与えるので脾の病証があらわ
れる(この章の病証に関する文章は、『霊枢』経脈篇と『素問』六元正紀大論を組
み合わせた文章がもとになっている)。 
 衝陽の脈が絶えると良くない(古代医学では、「死」という言葉を使っても必ず
しも死んでしまうということでも無い。ここでは「良くない」とした)。

次回は、至真要大論篇第七十四注
第十七章からです。

               (素問勉強会世話人  東大阪地域 松本 政己)